モンゴル首相、プーチン大統領と会談、天然ガスパイプライン「シベリアの力2」など協議

(モンゴル、ロシア、中国)

北京発

2022年09月29日

第7回東方経済フォーラムに出席のためロシア・ウラジオストクを訪問したモンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は9月7日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。

プーチン大統領は「ロシアとモンゴルはこれまでウランバートル鉄道(注1)、エルデネット鉱山などの大型プロジェクトを協力して成功裏に収めてきた。今後も大型プロジェクトの互恵的な協力に前向きだ」と表明した。大統領は具体例として、ロシアから中国向けに天然ガスを輸送するパイプラインの962キロをモンゴル経由で建設するプロジェクト(シベリアの力2:2020年1月6日記事参照、「モンゴル経済概況(2020年6月)」参照)を挙げ、「この案件は地域発展に重要な役割を果たすことが期待されている」と述べた。モンゴル政府発表によると、双方は同パイプラインの稼働について2029年を目指して積極的に推進することについて話し合った。

オヨーンエルデネ首相はロシアの資源大手ガスプロムのアレクセイ・ミレル会長とも会談し、天然ガスパイプライン建設について意見交換した。ガスプロムはモンゴルとロシアの合同作業部会がスケジュールどおりに進んでいることに関して、モンゴル政府の協力に謝意を示すとともに、「地域を横断して実施するこのプロジェクトが相互に利益をもたらすことを確信している」と述べた。オヨーンエルデネ首相は「天然ガスの世界的企業のガスプロムとプロジェクトを共同で実施できることは喜ばしい」と述べた。

電力分野でも、エグ川水力発電所建設の問題(注2)についてロシア側と交渉の結果、モンゴルが国連の専門家調査チームと共同で環境アセスメントを実施し、その結果を基に最終的に判断すると決定した。ロシア側はエグ川水力発電所と第3火力発電所(注3)拡張のための支援を表明した。

9月15日には、モンゴルのオフナー・フレルスフ大統領はウズベキスタンで行われた上海協力機構(SCO)加盟国拡大首脳会議に出席し、プーチン大統領、中国の習近平国家主席との3カ国首脳会談を行った。モンゴル外務省によると、会談ではモンゴル経由でロシアから中国への天然ガスパイプラインを建設するプロジェクトは3カ国協力で特に重要との認識でモンゴル・ロシア・中国が一致したという。

(注1)モンゴルの北のロシア国境から、南の中国国境までを結ぶ鉄道。モンゴルとロシアの合弁企業が経営している。

(注2)モンゴルからロシアに流入するセレンゲ川の上流にあるエグ川に水力発電所のダムを建設することについて、ロシア側がセレンゲ川の水量減少やバイカル湖の水位低下などの環境に与える影響を懸念していたことにより、エグ川水力発電所建設プロジェクトはロシア側の賛同が得られずに長年停滞していた。モンゴルでは、国内の電力供給不足と世界的な脱炭素の流れの中、石炭火力発電所以外の選択肢として、水力発電所を建設する必要性に迫られている。

(注3)第3火力発電所は社会主義時代にソ連の支援によってウランバートル市に建設された電熱併給型石炭火力発電所。民主化以降もロシアの支援で数度にわたって改修・拡張が行われている。

(藤井一範)

(モンゴル、ロシア、中国)

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