VW、車両電動化に向けエンジン部門の従業員を再訓練

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年09月13日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は8月29日、ドイツ北部のニーダーザクセン州ザルツギッター工場で、乗用車の電動化に向けた従業員の再訓練などを進めると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同工場にはVWグループ初となる蓄電池セル工場が建設されることになっており、2022年7月にはオラフ・ショルツ連邦首相らが出席して定礎式が行われた(2022年7月22日記事参照)。同工場は2025年に稼働の予定で、年間で約50万台分の電気自動車(EV)に相当する40ギガワット時(GWh)の蓄電池セルを生産する予定だ。

1970年に操業開始したザルツギッター工場は、主にガソリンエンジンを製造してきた。このため、乗用車の電動化や蓄電池製造に向け、従業員の再訓練が必要になっている。同工場の従業員は約7,000人で、うち約5,200人がエンジン製造に従事する。2025年に操業する蓄電池セル工場の従業員数は約2,500人を見込む。従業員はエンジン製造部門からの配置転換を優先する予定。

VWは今後、ザルツギッター工場でこれまでエンジン製造に携わっていた従業員を、数年間かけて蓄電池セルの生産などに携われるよう再訓練する。同工場では既に約500人を再訓練済みで、(1)蓄電池セル生産、(2)蓄電池リサイクルのパイロット施設、(3)回転子、固定子など電動車向け部品の製造などに配置される。

また、同工場では2022年から、初めて化学専攻学生向けのインターン(実験室助手)を開始するほか、学生として学びながら企業実習する制度を導入して、化学、化学工学専攻の学生実習を受け入れる。蓄電池セル工場が操業する2025年までに、社内で育成した化学分野専門家を約80人そろえる計画だ。

VW部品部門担当トップのトーマス・シュマル最高経営責任者(CEO)は今回の発表に際して、「ザルツギッター工場は、ドイツ自動車産業の構造転換の最も素晴らしい例になる」とコメントしている。ドイツでは、乗用車の電動化によって、「欧州で2040年までに、主として内燃機関搭載車などに使われる部品関連で約58万人の雇用が失われる」(2021年6月9日記事参照)、「2025年までに少なくとも17万8,000人、2030年までに少なくとも21万5,000人の雇用に影響が出る」(2021年5月31日記事参照)などの研究結果が発表されている。自動車メーカーは国内工場の電動化を進めており(2020年12月1日記事2021年3月23日記事参照)、雇用の維持・安定の面からの電動化への対応も、待ったなしとなっている。

(高塚一)

(ドイツ)

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