米フルア、メキシコ湾でのLNG輸出拠点着工を発表、欧州向け供給拡大へ
(米国、EU)
ヒューストン発
2022年07月14日
米国エンジニアリング大手フルア(テキサス州アービング)は7月11日、米国液化天然ガス(LNG)生産企業ニュー・フォートレス・エナジー(ニューヨーク州ニューヨーク、以下NFE)から、ルイジアナ州のメキシコ湾南東沖で連邦政府が管轄する水域に建設予定のLNG生産施設「ファストLNG」の設計・調達・製造管理に関する着工指示書(Full Notice to Proceed)を受領したと発表した。
ファストLNGは、固定式の洋上プラットフォームを用いて年間約280万トンのLNGの輸出を計画しており、2023年第1四半期の操業開始を予定している。ファストLNGは2つのプロジェクトから成り立っており、第1プロジェクトは2022年の第1四半期に着工指示済みで、今回の着工指示は第2プロジェクトに当たる。洋上プラットフォームにはフルアのモジュール設計が採用され、NFEによれば、一般的なLNG施設に比べて費用を抑えつつ、短い工期で建設することが可能だとしている。
NFE会長兼最高経営責任者(CEO)のウェス・イーデンズ氏は「このプロジェクトが迅速に進めば、(LNGの輸出により)欧州のエネルギー危機の解決に貢献できるとともに、より安価で信頼性が高くクリーンな燃料を提供するという、世界のエネルギー貧困削減に向けた当社の取り組みを前進することができる」と述べる。
ファストLNGが計画どおりに稼働した場合には、米国のLNG輸出能力拡大および欧州のエネルギー安全保障に大きな意味を持つ。ロシアによるウクライナ侵攻などにより世界的にエネルギーの供給不足や価格高騰が続く中、特にロシアからのエネルギー依存度が高いEUでは、代替調達先として米国のLNGの輸入を増やしている(2022年3月28日記事参照)。その一方で、米国のLNG輸出の20%を担うLNG輸出ターミナルであるテキサス州のフリーポートLNGは、2022年6月から火災事故により操業を停止しており、操業再開の遅れが発表されると、欧州の天然ガス先物価格が急騰するなど、米国のLNG輸出能力が注目されていた(2022年6月15日記事参照)。
ファストLNGが計画どおりに稼働した場合には、フリーポートLNGを含む米国の7つの大規模LNGプラントの輸出能力が現在の日量136億立方フィートから142億立方フィートに強化されると試算されており(ロイター7月12日)、世界のエネルギー市場にポジティブなシグナルを与えそうだ。
(沖本憲司、葛西泰介)
(米国、EU)
ビジネス短信 bd609d2d96121015