RCEP協定、6月単月で最も多く利用されたEPAに
(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
アジア大洋州課
2022年07月22日
経済産業省が公開した7月1日付の第一種特定原産地証明書の発給状況によると、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に対する発給件数が6月単月で9,132件に達し、同証明書を発給する経済連携協定(EPA)のうちで最も多く利用されたことがわかった(添付資料図参照)。同省は、日本商工会議所のデータを基に毎月、企業が日本からの輸出取引に当たって利用するEPA別の第一種特定原産地証明書の発給件数を公開している(注1)。毎月の発給件数は2007年12月以降、常に日タイEPAが最多だった。他のEPAの第一種特定原産地証明書の発給件数が日タイEPA(6月:8,635件)を上回るのは14年6カ月ぶり。
RCEP協定の第一種特定原産地証明書の発給件数(月次)は、同協定が発効した2022年1月の671件から、2月3,450件、3月6,371件と毎月増加した。5月には7,211件となり、日タイEPA(7,811件)に迫っていた。1~6月のRCEP協定の同証明書の発給件数は、合計3万3,669件となった。同期間では日タイEPA(4万7,389件)に次いで2番目に多かった。
中国、タイでもRCEP活用進む
RCEPの利用は、日本以外でも進んでいる。中国国際貿易促進委員会の発表によると、2022年1~5月に中国の全国貿易促進システムで発行されたRCEP原産地証明書は4万3,600件、金額ベースでは20億8,200万ドルに達し、発給を受けた企業は1万社を超えた。また、タイ商務省外国貿易局は6月1日、2022年1~3月にRCEP協定を利用したタイからの輸出額が1億2,373万ドルに達したと発表した(2022年6月15日記事参照)。
ジェトロによるヒアリングでも、具体的にRCEPの活用や活用に向けた検討を進めている事例が散見される。中国の日本食品輸入業者は7月、酒類の輸入で具体的な関税削減効果があるとしている。また、マレーシアでは6月、中国やベトナムから仕入れた製品をマレーシアで保管の上、他国に輸出している小売業がRCEP協定によって、複数のFTAを併用する手間を省ける可能性があるとして、活用に関心を示している。
なお、RCEP協定が未発効の国のうち、インドネシアでは7月5日、国会の委員会で審議が終わった。今後、国会本会議で承認されれば、批准となる見通しだ。フィリピンでは7月4日、フェルディナンド・マルコス大統領がRCEP協定の批准を検討する上で、まずは良い点と悪い点に関する検証が必要との認識を示している(「Rappler」紙7月4日)。
RCEP協定の各国の譲許表(個別品目の関税の撤廃・削減の方法やスケジュールが定められた表)は同協定の条文の付属書(Annex I)に掲載されており、外務省のウェブサイトから確認可能だ(注2)。
(注1)第1種特定原産地証明書は、日本国内の事業者がEPAを利用した輸出取引を行うに当たり、日本商工会議所に申請して発給を受けるもので、「第三者証明制度」を採用するEPAで利用される。他方、輸出者や輸入者などが自ら原産地証明書を作成する「自己申告制度」のみを採用するEPA〔環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や、日EU・EPAなど〕については、上記統計に含まれない。なお、RCEPでは第三者証明制度に加え、認定輸出者もしくは輸出者による自己申告制度(輸出者による自己申告制度は協定発効時には日本、オーストラリア、ニュージーランド間のみ適用可能)や、輸入者による自己申告制度(日本への輸入時のみ適用可能)も採用されている。
(注2)各国ごとの付属書(Annex I Schedules of Tariff Commitments)は英文のみの掲載。日本の譲許表は日本語でも入手可能。RCEP協定活用の際の関税率の調べ方は「RCEP協定解説書(2022年2月改訂版)(12.0MB)」の第3章参照。
(山城武伸)
(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
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