米FRB、政策金利を0.75ポイント引き上げ、2022年末までに3.4%まで引き上げの見通し

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月16日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月14、15日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標0.75~1%から0.75ポイント引き上げ、1.5~1.75%にすることを決定した(添付資料図参照)。予想外に上昇した2022年5月の消費者物価指数(CPI)を受けて(2022年6月13日記事参照)、前回の会合で実質的に予告していた引き上げ幅(0.5ポイント)を上回り(2022年5月6日記事参照)、27年7カ月ぶりの引き上げ幅となった。なお、今回の決定に関して、11人のFOMC委員(1人は補欠委員)のうち、エスター・ジョージ委員(カンザスシティ連邦準備銀行総裁)のみが引き上げ幅を0.5ポイントにすべきとして、反対票を投じた。

FRBは6月15日に出した声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、景気の現状について、2022年1~3月期の成長率がわずかに縮小したものの、その後持ち直していると評価する一方、ロシアによるウクライナ侵攻はグローバルな経済活動の重荷になっていると述べ、前回と同様に中国の都市封鎖が供給網の混乱を悪化させる可能性があるとして警戒感を示した。また、前回までの「インフレは目標の2%に戻ると予測する」との文言は、「2%のインフレ目標に強くコミットする」に変更され、表現が強められた。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含めたFOMCの参加者18人による中長期の見通しも示された。長期化するウクライナ情勢や高インフレなどを背景に、2022年の実質GDP成長率の見通しは1.7%と、前回3月の2.8%からさらに下方改定された。また、2022年のインフレ率(コアCPE)の見通しは4.3%と、前回の4.1%から上方改定されている。他方、FF金利の引き上げについて、2022年末の見通しは3.4%と前回の1.9%から大幅に上方へ改定された。FOMCは年内残り4回行われるが、この水準に達するには、0.5ポイントや0.75ポイントの引き上げが複数回必要という想定になる。インフレの落ち着きを見込み、2023年末のFF金利の見通しは3.8%としているが、2024年には2022年と同じ3.4%と、景気を刺激も抑制もしない水準とされる長期均衡金利2.5%を上回る水準が続くことを見込んでいる(添付資料表参照)。

ジェローム・パウエルFRB議長は、会議後に開いた記者会見の中で、FF金利の0.75ポイント引き上げについて「インフレが再び予想外に上昇したため」と説明し、今後については「0.75ポイントの引き上げは明らかに異例であり、一般的とは考えていないが、次回の会合では0.5ポイントもしくは0.75ポイントの引き上げを行う可能性が高い」と述べた。また、同議長は「経済の軟着陸は可能」としつつも、「インフレはこの1年で顕著に進み、さらに予想外の動きがあるかもしれない。われわれは機敏に対応する必要がある」と述べ、今後も状況に合わせて対応していくことを強調した。

FRBは、CPIが5月に再加速したことを受けて金融の引き締めを急いでいるが、全米住宅建設業協会が同日に発表した6月の住宅市場指数は67(前月から2ポイント低下)と、6カ月連続で悪化するなど、住宅市場では既に金利上昇の影響が見られる。また、同じく同日に発表された小売売上高は、市場予想に反して前月から0.3%減少し、自動車ローンの金利上昇などにより自動車・部品販売が3.5%減少したことが影響した。高インフレは消費者心理を悪化させるが、急激な金利上昇もまたこれを悪化させ、景気を冷やし過ぎる恐れがある。FRBには、高インフレを抑制しつつ景気を抑制し過ぎずに軟着陸させるという難しい政策運営が求められている。

(宮野慶太)

(米国)

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