インテル、ドイツに170億ユーロを投じ最新の半導体工場を設立

(ドイツ、米国)

ベルリン発

2022年03月24日

米国の半導体大手インテルは3月15日、ドイツ東部ザクセン・アンハルト州のマグデブルクに、半導体工場を建設すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は今後10年間、EU域内において総額800億ユーロを投じ、研究開発から、製造、最新のパッケージング技術までの半導体バリューチェーンの構築を計画。そのうち330億ユーロを投資して、EU域内における研究開発・製造拠点を拡大する。

第1段階として、ドイツのマグデブルクに2つの最先端の半導体工場を建設する。投資金額は、330億ユーロの約半分を占める170億ユーロにのぼる。2023年前半に着工し、欧州委員会の承認を経て2027年に生産を開始する予定だ。インテルのオングストローム世代(注1)に対応する、最先端のトランジスタ技術を使用した半導体を製造するだけでなく、ファウンドリー(注2)サービスも提供する。また、建設段階で7,000人の雇用、新工場では3,000人のハイテク人材の雇用、さらにサプライヤーやパートナー企業において数万人規模の雇用が創出される見込みだ。

マグデブルクを進出先に決定した理由として、欧州の中心に位置し、人材やインフラ、サプライヤーと既存顧客のエコシステムが備わっていることが挙げられた。さらにドイツは、欧州の半導体製造やイノベーション創出の中核拠点となる「シリコンジャンクション」を確立するのに理想的な場所だとした(注3)。

またインテルは、アイルランド工場の拡張に120億ユーロを投資するほか、イタリアでは同国政府と後工程の新工場について交渉しており、さらにポーランドとスペインのラボスペースを拡張し、フランスに研究開発拠点とデザインハブを設置するとしている。

欧州委員会は2022年2月に、欧州域内の半導体の研究開発・生産の強化と安定供給を目指す法案を発表(2022年2月10日記事参照)。欧州委は2030年までに次世代半導体の域内生産の世界シェアを20%以上とする目標を掲げ、半導体施設への補助金や迅速な審査などの支援を提供する。インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は、欧州半導体法案が半導体市場における欧州の地位を劇的に向上させると評価している。

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は同日、「インテルのマグデブルクへの投資は、困難な時期にあるドイツ経済にとって重要な刺激で、欧州のデジタル主権の大きな飛躍だ」と期待を示した。また、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)のアヒム・ベルク会長も同日、「現在の半導体不足の危機は、ドイツ経済全体に大きな負担となっている。半導体の輸入依存からの脱却と国内生産能力の向上が必要だ。特に通信やクラウドコンピューティングのようなデジタル分野において、自動車産業と同様に半導体の需要が高い」としてインテルの投資計画を歓迎した。

(注1)オングストロームとは長さの単位。0.1ナノメートル(100億分の1メートル)を表す。

(注2)顧客の設計データに基づいて半導体を製造する、受託生産。

(注3)隣接するザクセン州には、マイクロエレクトロニクスや半導体メーカーが集積している(2021年6月15日記事参照)。

(中村容子)

(ドイツ、米国)

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