シェフラー、研究機関などと共同で液体有機水素キャリア使用の燃料電池の開発発表

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年02月09日

ドイツの自動車部品大手シェフラーは1月28日、液体有機水素キャリア(LOHC、注1)燃料電池の開発のため、ドイツのハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズ(Hydrogenious LOHC Technologies)、ヘルムホルツ再生可能エネルギー研究所(HIERN)と、水素技術の協力合意の覚書を締結したと発表した(同社プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

共通目標であるLOHCを使用した水素燃料電池の開発で、ハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズは、媒体としてベンジルトルエンを使用し、化学反応により水素を結合する技術を持つ。水素を輸送・貯蔵するには通常、低温にして液化、または高圧で水素を圧縮する必要があるが、同社の技術を使えば、水素を常温・常圧で輸送・貯蔵できる。ハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズのダニエル・タイヒマン最高経営責任者(CEO)は「燃料電池にLOHCを直接使えれば、気体としての水素の取り扱いが不要になり、より安価で安全な利用が可能になる」とした。シェフラーのティム・ホーゼンフェルト・リサーチ・イノベーション/コーポレートテクノロジー部門上級副社長は「LOHC燃料電池は従来の水素技術を補完するだろう」とコメントしている。

シェフラーは、材料、成形、表面加工などに関する技術・専門知識を有する。一方で、ハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズとHIERNはLOHC関連の特許やノウハウを持っている。今回の協力では、シェフラーとHIERNがLOHC燃料電池技術を開発、シェフラーがバイポーラプレート(注2)を製造する。一方、LOHC燃料電池に必要な触媒と電解膜はHIERNが開発する。

ハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズはバイエルン州エルランゲンに本社を置く企業。2021年9月には、日本のJERAが子会社を通じて同社に約1,500万ユーロを出資している。HIERNはニュルンベルクに本拠を置く研究機関で、化学的水素貯蔵が研究分野の1つになっている。バイエルン州は2020年に「水素戦略」を発表(2020年6月5日記事参照)、約230の企業・研究機関が参加する、同州の水素クラスター「H2.Bayern外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」をニュルンベルクに拠点を置くなど、特にニュルンベルク、エルランゲン周辺で水素活用の動きが相次いでいる。

(注1)液体有機水素キャリア(Liquid organic hydrogen carriers)の略。化学反応によって水素を吸収・放出できる有機化合物。

(注2)燃料電池セルの部品の1つ。セパレーターの一種で、水素ガス通過面、酸素ガス通過面、冷却水流路が一体化したもの。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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