中銀、輸入取引に3月からL/C決済義務化を通知、経済界は撤回要求
(エジプト)
カイロ発
2022年02月17日
エジプトの現地メディアによると、エジプト中央銀行(CBE)は閣議決定に沿って、輸入取引で3月以降は原則として信用状(L/C)を利用した決済のみを認めると国内銀行に通知した。これに対して、主要な経済団体が貿易を停滞させるとして撤回を求めているが、CBEのターレク・アーメル総裁は予定通り実施するとしている。
CBEは2月17日時点で、本件に関する公式発表を行っていないが、国内各行への通知の中で、輸入通関の改善に関する取り組みの一環だとしている。一方、具体的な説明はなく、措置適用までの準備時間が短いことから、経済界には困惑が広がっている。エジプト商工会議所連盟(FECC)とエジプト産業連盟(FEI)、エジプト事業者協会(EBA)は14日、今回の措置は各企業が新型コロナウイルス禍の中で再構築したサプライチェーンをかく乱するもので、特にL/Cを利用しない取引が中心の中小企業に打撃となるほか、薬品などの輸入に支障が出れば国民の健康に不利益が出るなどとして、CBEの決定の即時撤回を共同で申し入れた。これに対して、CBEのアーメル総裁は16日、国営メディアMENAを通じて、今回の通知に従うよう促している。
今回の措置では、外国企業が設立した現地法人および支店は対象外とされている。政府はエジプトを製造と輸出の拠点とするべく、外国企業誘致を進めている。この決定が適用される場合、最終製品に使われる部品の輸入が煩雑かつコスト高となり、販売先市場での競争力をそぐことになる。CBEは一定の配慮を示した格好だが、上記経済団体らは、国内企業との間で公平性が伴っていないとも批判する。エジプトでは、制度導入後に一部内容を変更することや、例外事項を設けることも多い(2021年6月24日記事参照)。輸出側企業はしばらくの間、取引ごとに現地輸入企業に最新状況を確認するなどの対応が求められる。
政府は行政手続きの電子化を進めている。2021年10月には通関にかかる日数の削減を目的として、輸入貨物の事前通告制度(ACI)を導入した(2021年9月27日記事参照)。輸入企業は船積み書類をNafezaシステムを通じて提出(アップロード)することが求められており、税関をはじめとする関係省庁は貨物の到着前に書類確認ができる。ムハンマド・マーイト財務相は1月23日、1件当たり平均で約6日以上かかっていた通関手続きがACI導入後は約3日まで短縮されたと、その成果を強調している。
(福山豊和)
(エジプト)
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