液化水素運搬船、日本からオーストラリアに到着

(オーストラリア、日本)

シドニー発

2022年01月24日

オーストラリアの大手エネルギー会社AGLエナジーと、川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅、住友商事が参画する水素エネルギーサプライチェーン(HESC)プロジェクトは1月21日、液化水素運搬船が日本からオーストラリアに到着したと発表した。

HESCプロジェクトは、ビクトリア(VIC)州ラトロブバレーで産出される褐炭から水素を製造し、同州ヘイスティングス港で液化・積荷して、日本の神戸にある液化水素荷役実証ターミナルへ輸送する世界初の実証事業だ。日本政府だけでなく、連邦政府とVIC州政府も支援する同プロジェクトは、温室効果ガス排出削減や雇用創出に貢献するとして、大きな期待が寄せられている。2021年3月には、VIC州に建設した褐炭ガス化・水素精製設備と水素液化・積荷基地が運転を開始した(2021年3月15日記事参照)。

液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」は12月24日、神戸の荷役実証ターミナルを出港。約半月の航海を経てヘイスティングス港に到着した。同船は、液化水素の積荷作業や各種機器の点検を実施した後、オーストラリアを出港し、2月中下旬に日本へ帰港する予定だという。

HESCプロジェクトはまた、クリーン水素の製造を目指して、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)に取り組む。連邦政府とVIC州政府がバス海峡のギプスランド盆地で開発している「カーボンネット」プロジェクトと連携し、水素製造の際に発生するCO2を地中に貯留する計画だという。

モリソン首相は、「HESCプロジェクトは、両国にとって、またオーストラリアの水素産業にとって、重要な取り組みだ」と述べ、同プロジェクトの商用化の前段階を支援するため、さらに750万オーストラリア・ドル(約6億1,500万円、豪ドル、1豪ドル=約82円)を拠出する用意があるとした。なお、連邦政府は1月7日、水素サプライチェーンの構築に当たって、海外からの投資を呼び込む新たなイニシアチブ「オーストラリア・クリーン水素貿易プログラム(ACHTP)」を立ち上げ、1億5,000万豪ドルを拠出すると発表した。ACHTPの第1弾では、日本へのクリーン水素の輸出を支援するとしている。

(住裕美)

(オーストラリア、日本)

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