バイデン米政権、人権侵害に基づき中国製太陽光パネル原料の輸入を一部制限、関連企業をELに追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年06月25日
米国税関国境保護局(CBP)は6月24日、中国の新疆ウイグル自治区で太陽光パネルの原料などを製造する合盛硅業(Hoshine Silicon Industry)からの輸入を一部差し止める違反商品保留命令(WRO)を発表した。同社製のシリカ製品や同材から生産される製品(ポリシリコンなど)を対象に、生産工程で強制労働があったとして、輸入を制限する。
CBPはWROに基づき、対象製品について、米国内の港湾への輸入を保留する。保留された製品は、輸入者が製品の製造工程にける強制労働がないことを証明しない限り、米国内に通関することはできない(注1)。CBPの推定によると、合盛硅業が過去2年半で米国に輸出したシリコンは600万ドルに相当し、同社製の原材料を含む太陽光製品の対米輸出額は同期間に1億1,500万ドルに上る(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月24日)。英国シェフィールド・ハラム大学の調査によると、太陽光パネル向けポリシリコンの生産シェアについて、新疆ウイグル自治区は世界全体の約45%を占める。米国政府関係者は、太陽光パネルを製造する各メーカーは調達先を変更しつつあると述べている。
CBPは、WROの根拠として、強制労働に関わるILO指標に該当する、労働者に対する脅迫や移動の制限が確認された、と説明した。CBPを管轄するアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は「バイデン大統領がG7サミットで明言したように、米国はサプライチェーンにおける現代の奴隷制度を許容しない」と述べた(注2)。バイデン政権は、今回のCBP発表に際し、新疆ウイグル自治区の強制労働への取り組みを紹介し、現在有効なWRO計49件のうち35件が中国を、さらにそのうち11件が新疆ウイグル自治区産の製品を対象にしていることや、労働省の「児童・強制労働による製品リスト」に中国における強制労働で生産されたポリシリコンを追加したことなどを示している(注3)。
また、商務省・産業安全保障局(BIS)は6月24日、合盛硅業を含む新疆ウイグル自治区に所在する5つの主体を、エンティティー・リスト(EL)に追加した。輸出管理規則(EAR)の対象となる米国製品(物品・ソフトウエア・技術)については、(再・みなし)輸出を行う場合に事前許可が必要となるが、今回ELに掲載された主体は、許可審査が「原則不許可(presumption of denial)」の扱いになる。BISは、ELに指定した理由について、これらの主体が新疆ウイグル自治区の少数民族に対して、恣意(しい)的な拘束や強制労働、高技術による監視などの人権侵害に関与したとしている。
ELに追加された主体は、合盛硅業や大全新能源(Daqo New Energy)、東方希望有色金属(East Hope Nonferrous Metals)、協鑫新能源材料科技(GCL New Energy Material Technology)の新疆ウイグル自治区拠点に加え、新疆生産建設兵団(XPCC)が該当する(注4)。
(注1)違反商品保留命令(WRO)に基づく、具体的な輸入差し止めの手続きについて、2021年6月25日付地域・分析レポート参照。
(注2)6月、英国で開催されたG7サミットでは、強制労働に依拠しないサプライチェーンへの取り組みが合意されている(2021年6月14日記事参照)。
(注3)リストは注意喚起の位置付けで、法的拘束力は有さない。リストの更新は通常2年に1度行われるが、バイデン政権は今回初めて例外的に品目の追加を行っている。
(注4)XPCCについては、2020年12月に綿(製品)の輸入に関してWROが発動し、その後、対象主体を問わない綿・トマト(製品)の禁輸措置に発展している(2021年1月15日記事参照)。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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