2021年の貿易見通しを上方修正、GDP成長率見通しは維持

(シンガポール)

シンガポール発

2021年05月25日

シンガポール貿易産業省(MTI)管轄下の産業・貿易振興機関エンタープライズ・シンガポール(ESG)は5月25日、同国の輸出指標である非石油部門の地場輸出(注)の2021年通年の見通しを「前年比1.0~3.0%増」と、2020年11月に発表の予測「0.0~2.0%増」から上方修正した。また、2021年通年の貿易総額の見通しも「5.0~7.0%増」と、2021年2月17日に発表した「2.0~4.0%増」から上方へ修正した。

ESGは予測を上方修正した理由について、「2021年第1四半期(1~3月)に、貿易総額と非石油地場輸出がともに予想を上回った」ためと指摘した。2021年第1四半期の非石油地場輸出は、前年同期比9.7%増加した。これは、世界的な半導体の需要増を受けて、エレクトロニクス部門の輸出が14.8%と2桁増だったほか、関連製造機器の輸出増により、非エレクトロニクスも8.3%増加したことによるもの。非石油貿易の伸びに牽引されるかたちで、貿易総額も2020年第4四半期の5.1%減から、2021年第1四半期には4.9%増へとプラスに転換した。

不透明感の深まりを受け、2021年のGDP成長率予測「4.0~6.0%増」は維持

一方、MTIは同日、2021年通年のGDP成長率予測「4.0~6.0%」を維持した。通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月に、2021年通年のGDP成長率がこの公式予測レンジの上限を上回る可能性を指摘していた(2021年4月15日記事参照)。しかし、シンガポール政府はその後、国内の新型コロナウイルス感染者が再び増加したことを受け、5月16日から6月13日まで、集会の人数上限を2人に制限し、飲食店の店内飲食を禁止するなど感染防止の時限的措置導入に踏み切っている(2021年5月17日記事参照)。MTIは発表の中で、「国内外のパンデミックの行方の不透明感が通常よりも一段と高まった」として、現状のGDPの予測を当面維持する、と説明した。同省は8月に、最新のデータを考慮した上で、予測を見直す方針だとしている。

MTIの発表によると、2021年第1四半期(1~3月)のGDP成長率は改定値で、前年同期比1.3%だった(添付資料参照)。前期比(年率)ベースでは、第1四半期は3.1%(季節調整済み)と、4月発表の速報値の2.0%から上方修正した。

(注)自国生産による物品輸出で、再輸出を除く。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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