第1四半期のGDP成長率、前年同期比0.2%とプラス転換

(シンガポール)

シンガポール発

2021年04月15日

シンガポール貿易産業省(MTI)は4月14日、2021年第1四半期(1~3月)のGDP成長率が速報値(注)で、前年同期比0.2%だったと発表した。前年同期比ベースでGDP成長率がプラスに転換するのは、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年第1四半期以来、初めて。前期比ベースでは第1四半期は2.0%(季節調整済み)と、3期連続のプラスとなった(添付資料表参照)。

分野別の成長率では、製造業が第1四半期に前年同期比7.5%で、エレクトロニクスや精密エンジニアリング、化学、バイオメディカル(医薬・医療機器)の生産拡大が全体を支えた。一方、サービス業はマイナス1.2%。建設もマイナス20.2%と4期連続の2桁減となった。

2021年通年のGDP成長率、公式予測の4~6%を上回る可能性

MTIは2月15日に2021年通年のGDP成長率見通しについて、「4.0~6.0%」との予測を維持していた(2021年2月17日記事参照)。通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月14日の発表で、2021年通年のGDP成長率がこの公式予測レンジの上限を上回る可能性を指摘した。MASは「一部の国々の景気対策や複数の主要国での新型コロナウイルスワクチン接種の拡大により、2020年10月以来、国際経済の見通しが改善している」との認識を示した。ただ、MASは、ウイルス変異株のさらなる拡大や感染対策の早すぎる解除などにより、国際経済の回復が遅れる大きなリスクもあると述べた。

MASは、2021年1~2月に民間輸送費や宿泊費が上昇し、消費者センチメントも改善しているとして、同年通年の消費者総合物価指数の予測をこれまでの「マイナス0.5%~プラス0.5%」から、「プラス0.5%~1.5%」へ上方修正した。住居関連費と民間輸送費を除いたコアインフレについては「0~プラス1%」の予測を維持した。

MASは、コアインフレが2021年内に引き続き低いレベルで推移するとして、現状の金融緩和政策を維持すると発表した。シンガポール・ドル(Sドル)の誘導目標帯の傾斜幅を引き続きゼロとし、変動幅も中央値も維持した。MASは金融政策として、政策金利を設定しない代わりに、年2回(4月と10月)、Sドルの変動幅を見直す「為替管理政策」を実施している。

(注)2021年第1四半期のGDP成長率の速報値は同年1~2月の統計に基づく数値。MTIは5月中旬に、同期のGDPの改定値を発表する予定。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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