中国の次期5カ年規画、科学技術の自立強化を国家発展戦略の柱に位置付け、国家経済安全保障も強化

(中国)

北京発

2020年11月06日

中国共産党第19期中央委員会第5回総会(五中全会)が10月26~29日、開催された。五中全会では、今後の中国の経済・社会発展の方向性を定める、第14次5カ年規画(14・5規画、2021~2025年)と2035年までの長期目標に関する提案が審議・採択された(2020年11月6日記事参照)。

10月29日に発表された五中全会のコミュニケ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、14・5規画の経済・社会分野での主要目標が示された。主要目標においては、イノベーションの重要性が強調されるとともに、産業チェーンの現代化を含む現代産業システムの発展の加速のほか、経済分野も含む広義の国家安全保障の強化が盛り込まれた。

イノベーションについては、国家の現代化建設全体の中核として位置付け、科学技術の自立強化を国家発展戦略の柱とする方針だ。

現代産業システムの発展については、産業チェーンやサプライチェーンの現代化レベルを引き上げること、次世代IT(情報技術)や新素材産業を含む戦略的新興産業を発展させることなどが示された(注1)。これに加え、「製造強国」「品質強国」「インターネット強国」「デジタル中国」の建設といったキーワードも示された。

国家安全保障については、経済、科学技術や情報など幅広い分野を包含する「総体国家安全観」を堅持し、「安全な発展を国家発展の各領域と全過程において貫き通す」とされた(注2)。このほか、国家安全システムおよび能力の建設を強化し、国家経済安全を確保する、との方針も明記された。

中国米国商会などは、中国政府が外商投資法において内外無差別を規定している一方、国家安全保障を背景に、政府調達分野などにおいて実質的に中国企業生産品の調達を促進する制度を実施しており、民間調達においてもそのような動きが広がることを懸念している(2020年10月23日記事参照)。

今回のコミュニケにおいても、科学技術の自主強化とともに、国家安全保障が経済面を含む幅広い領域において強化される方針があらためて明確になったことで、そのような動きがより広がっていくか、注視する必要がある。

(注1)戦略的新興産業には、次世代ITやバイオ、ハイエンド設備製造、新素材、新エネルギー、スマート・新エネルギー車、省エネ・環境保護、デジタルクリエイティブという8つの産業分野が含まれる。

(注2)「総体国家安全観」は、2014年4月に開催された中央国家安全委員会第1回会議において提示された国家安全保障についての概念で、政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核など幅広い分野を含むとされる。

(北京事務所)

(中国)

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