製造業の回復基調に陰り

(フィリピン)

マニラ発

2020年08月06日

英国の調査会社IHSマークイットは8月3日、フィリピンの2020年7月の製造業購買担当者指数(PMI)(注)が48.4を記録したと発表した。過去最低を記録した4月の31.6から、5月に40.1、6月に49.7と着実に回復しつつあったものの、7月は前月比1.5ポイント減となった。日系企業含む製造業が多数集積するマニラ首都圏と近隣地域では、3月中旬から敷かれていた厳格な広域隔離措置が6~7月にいったん緩和されたものの、感染者数の増加により8月から再び制限が強化された(2020年8月3日記事参照)。これにより公共交通が運休し、工場の稼働率が低下するなど、再び製造業への悪影響が増すと懸念される。

内需・外需ともに低下傾向

ASEAN自動車連盟(AAF)によると、1~6月のフィリピンにおける自動車の生産および販売台数はそれぞれ、前年同期比31.3%減の2万7,919台、51.2%減の17万4,135台だった。また、AAFによると、二輪車は生産台数が前年同期比59.9%減の23万3,948台、販売台数が45.7%減の45万1,034台だった。いずれも、前年同期を大きく下回った。月別推移を見ると、四輪車は、6月の生産が前月比約3.4倍の4,138台、同じく販売が前月比約3.3倍の1万5,578台と、いずれも回復基調にある。二輪車も同様に、6月の生産が前月比約9.8倍の2万2,032台、同じく販売が約4.0倍の8万8,475台と急回復している。ただし、四輪車メーカーには2020年通年の新車販売市場が前年より3~4割縮小するとの予測もあり、厳しい状況が続く。

輸出志向性の高いフィリピンの製造業にとっては外需の影響も大きい。フィリピン統計庁(PSA)によると、1~5月の工業製品輸出額は前年同期比23.1%減の179億3,389万ドルで、うち主力の電気・電子機器・同部品は同18.8%減の124億8,061万ドルだった。輸出先は、日本が前年同期比12.7%減の37億3,118万ドルで首位、以下、香港が同5.4%減の34億820万ドル、米国が同30.9%減の32億3,338万ドル、中国が同26.8%減の28億4,128万ドルと続く。主要輸出先で軒並み前年同期を下回った格好だ。さらに、フィリピン半導体・エレクトロニクス産業連盟(SEIPI)のダニロ・ラチカ理事長は7月28日、2020年通年の輸出見通しを前年比5%増から同26%減に下方修正している。

(注)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの指数に一定のウエートを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

(石原孝志)

(フィリピン)

ビジネス短信 8c0006c3f41a30cf