復興対策の早期合意を求める欧州産業界

(EU)

ブリュッセル発

2020年06月19日

6月19日にビデオ会議形式で開催される欧州理事会(EU首脳会議)を前に、欧州の産業界からは復興基金「次世代のEU」(2020年5月28日記事参照)および次期中期(2021~2027年)予算(多年度財政枠組み:MFF)の早期の合意を求める声が上がった。

7月中の合意に照準

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は6月16日付で欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長らに書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出した。書簡では、2020年のEU経済は8%程度の大幅なマイナス成長が予想されるものの、適切な政策投入によって、2021年末までに新型コロナウイルスの影響による「危機」以前の水準まで経済を回復させることが可能と述べ、復興対策の早期合意を求めた。6月19日の欧州理事会はそのための「重要な足掛かり」であるとし、夏休み時期に入る前に合意に達するよう要求している。

他方、ビジネスヨーロッパは、「財源確保の手段として新しい税の導入に頼るべきではない。われわれは新しい独自財源に関する提案がビジネスコストを著しく増加させることを懸念する」という立場を明確にした。欧州委員会の提案に基づけば、復興基金のために金融市場から調達した7,500億ユーロは30年かけて償還され、その資金を賄う独自財源の拡大が課題となっている。

欧州自動車工業会(ACEA)、欧州自動車部品工業会(CLEPA)、欧州自動車販売・保守事業者評議会(CECRA)の3団体も6月16日付で、自動車産業界に対する緊急の支援を求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)をEU加盟国首脳に送付した。書簡では、「次世代のEU」を「前向きな一歩」と一定評価しつつも、具体的な政策の実施は各加盟国に委ねられており曖昧さが残るとし、EUワイドでの需要刺激策導入が必要と指摘した。また、EU理事会および欧州議会の承認プロセスにかかる時間などを考慮すると、2020年中には復興対策の多くが実行されない恐れがあるとして、迅速な意思決定を強く求めた。

その他、デジタルヨーロッパ(欧州情報通信民生電子技術産業協会)も6月16日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、23の加盟国のデジタル関連団体とともにミシェル常任議長および加盟国首脳に宛てた書簡を公表し、復興対策の早期合意とデジタル化促進のための十分な予算の確保を訴えた。書簡では「6月および7月の欧州理事会は欧州史上、決定的な意味を持つ」と述べ、7月までの合意達成に期待を示した。

主要紙は、復興基金に関して、EU加盟国首脳によるビデオ会議形式での合意形成は交渉上の制約から困難との見方を示しており、7月1日にEU議長国に就任予定のドイツのアンゲラ・メルケル首相が7月末までの対面での合意を目指していると報じている。

(安田啓)

(EU)

ビジネス短信 084045cdc123b287