サンクトペテルブルクで観光税を導入へ
(ロシア)
サンクトペテルブルク発
2019年04月19日
ロシアのプーチン大統領は4月10日、アレクサンドル・ベグロフ・サンクトペテルブルク市長代行との会談で、ベグロフ市長代行が提案したサンクトペテルブルク市での観光税導入を承認した。
詳細はまだ明らかになっていないが、サンクトペテルブルク市内の外国人宿泊客を対象に滞在1日(1泊)当たり1人100ルーブル(約170円、1ルーブル=約1.7円)を課税する構想。ホテルが宿泊客から代行して徴収するとみられ、ベグロフ市長代行によると、既に産業商務省、財務省と議論を行っており、制度の詳細や導入時期は今後検討される見通しだ。
徴収した観光税の使用用途について、ベグロフ市長代行は、サンクトペテルブルク市内の老朽化した歴史的建造物の、10年間にわたる修復に要する費用に充当する考えをプーチン大統領に説明している。修復に要する費用は170億ルーブルとなる一方で、観光税導入に伴う市政への歳入は10億ルーブル強(注1)に上るという。
2018年にサンクトペテルブルク市を訪問した外国人観光客数は約390万人に達し、2019年は400万人を見込む。また、宿泊予約サイト「tvir.ru」によると、2018年の同市内での(ロシア人も含むとみられる)観光客1人当たり平均宿泊日数は4.2泊だった。2018年ベースで単純試算すると、観光税導入に伴う年間の歳入は16億3,800万ルーブルに上り、市政府は修復の必要経費170億ルーブルの大部分を、修復期間とほぼ同等の10年強をかけて観光税で賄う想定とみられる。
ロシアの観光業界は、観光税の導入に否定的だ。業界団体「ロシア観光業連合」の広報責任者のイリーナ・チュリナ氏は、観光税は実質的にホテル(注2)への増税だと述べ、歴史的建造物の老朽化に責任を負わない観光客を対象とした課税は不適切だと主張する(「インターファクス」4月10日)。
一方で、エルミタージュ美術館館長のミハイル・ピオトロフスキー氏は、他国でも観光税の導入が進んでいることを踏まえて理解を示した上で、サンクトペテルブルク市内での観光インフラが貧弱なことを指摘し、市当局のインフラ整備の進展に期待を示す。他方で、観光税の徴収対象から、ユーラシア経済連合(EEU)からの観光客を外す可能性を当局が検討していることについて、現場で混乱が発生することを懸念している(「SPB Dnevnik」4月12日)。
(注1)1年間当たりの歳入額とみられる。
(注2)集合住宅での宿泊施設(ホステルなど)の設置を禁止する法案(2019年4月12日記事参照)については、4月15日にプーチン大統領が署名。2019年10月1日に発効することが正式に決まっている。
(一瀬友太)
(ロシア)
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