追い詰められるEU離脱強硬派、メイ首相合意案支持に傾斜

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月27日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、英国議会が政府から議事進行の主導権を奪う修正動議が可決(2019年3月26日記事参照)されたことを受け、動議を主導したオリバー・レットウィン元内閣担当相らは3月26日、翌日の議事進行案を明らかにした。これによると、議会は27日夜に政府のブレグジット合意案に代わる複数の案について採決を行うほか、4月1日の議事進行も議会が管理して審議を続け、過半数の支持を得られる代替案の特定を目指す。

こうした動きにより、テレーザ・メイ首相だけではなく、与党・保守党のEU離脱強硬派も窮地に立たされている。親EU派が多い議会が主導権を握り、関税同盟や単一市場への残留などEUとの関係がより近い代替案や、EU残留につながる案が選ばれる可能性が拡大。他方で、多くの強硬派が好む合意なき離脱(ノー・ディール)は、議会の大多数が強固に反対している上、メイ首相も3月25日の議会演説で「議会が承認しない限り、ノー・ディールは起こらない」と強調している。保守党のウィリアム・ヘイグ元党首は、「テレグラフ」紙(電子版3月25日)に、「強硬派はやがて、どの代替案もメイ首相の案に劣ると気づくだろう」と題する寄稿を掲載。メイ首相の合意案に妥協なく反対してきた結果、自ら窮地に陥りつつあるのは明らかだ。

こうした中、強硬派最大勢力の欧州調査グループ(ERG)の代表、ジェイコブ・リースモグ議員は3月26日夜、大衆紙「デイリー・メール」(電子版)への寄稿の冒頭で、「考えを変えて申し訳ない」と述べ、(北アイルランドの)民主統一党(DUP)がそうするなら「メイ首相の合意案を喜んで支持する」と明言。同議員の方針転換を受け、首相案支持に傾く強硬派が増えることは確実。同じく強硬派の代表格、ボリス・ジョンソン前外相も同日の会合で、「(メイ首相の合意案を)また否決すれば、EUから離脱できなくなる可能性が高まる」とコメントし、迷える心中をにじませている。

そのDUPは慎重姿勢を崩しておらず、強硬派が雪崩を打ってメイ首相支持に転じるには至っていないため、3度目の合意案採決での議会承認の見通しはなお予断を許さない。合意案支持と引き換えに首相に進退を迫る強硬派の声も強く、駆け引きは合意の中身よりも、政治闘争の色が一段と強まっている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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