GMが求める日本の次世代自動車技術

(米国)

シカゴ発、米州課

2018年03月30日

ジェトロは、2月28日、デトロイト市郊外のゼネラル・モーターズ(GM)の開発拠点であるテックセンター近くのイベント会場で、同社と日本の自動車部品メーカーとの展示商談会「Japan Innovation Showcase at GM」を開催した。ジェトロはこれまで、フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)、フォードと同様の商談会を開催してきており、GMとは今回が初めてだった。事前にGMの審査を通過した日本企業28社がサンプル品を展示し、GMと活発な商談を行った。

日系企業28社がGMとの初めての商談会に参加

米国で営業活動を行う多くの自動車部品メーカーが課題として挙げるのは、顧客となる自動車メーカーなどとのファーストコンタクトの難しさだ。特に、GMなどの米系自動車メーカーと単独で接点を持つことが難しい、と話す日系企業は多い。また米国では引き継ぎなく担当者が交代することも多く、担当者交代が取引終了につながりかねないことから、複数のコンタクトを確保することも重要だ。今回出展した企業からも、同様の声が多く聞かれた。

この点への1つの対策となるのが、展示会や米国自動車部品工業会(OESA)が会員向けに開催する相手先ブランド生産(OEM)担当者との情報交換会(タウンホールミーティング)への参加だ。これらのイベントに参加することで、単独ではアプローチが難しい相手とも、接点を得やすくなる。ジェトロは、これまで、2016年にFCA(2016年3月18日記事参照)と2回、2017年にフォードと1回の個別の商談会を行ってきた。今回、デトロイト3最後の1社となるGMと初めて商談会を開催した。

商談会の開催後、GMの担当者は「過去にGMが行った類似商談会と比較しても、GMグループ全体のイノベーションを率いる担当部署含め、幹部クラスの社員の参加数が多い商談会だった」と、日本の自動車部品メーカーが有する技術や製品への関心の高さを表すコメントを寄せた。出展した日本企業からは「GMのライトパーソン(適任者)に会うことができた」との声が聞かれ、今後の商談の進展が望まれる結果となった。

自動運転やEVは新たな商機

今回ジェトロが商談会を開催するに当たり、GMからが求められたのは、「現在、市場に出回っている製品ではなく、2~3年後に市場に投入する予定の『イノベーション技術』」を集めることだった。これを受け、本商談会では自動運転や電気自動車(EV)に関わる技術など、次世代自動車の開発を商機と捉える自動車部品メーカーが複数出展した。例えば、センサーを生産している企業にとっては、自動運転技術の導入に伴い1つの自動車に必要なセンサーの数が増えるため商機になる。EVではガソリン車よりもクリーンな環境での駆動を求められるため、モーターの洗浄機械を販売する企業にとって商機になる。半導体は、自動運転、EVともに、ガソリン車よりも多く利用されると指摘する企業は多い。

米国におけるEVの販売台数は増加傾向にあるものの、米国新車販売台数全体の中での割合は3.2%(2017年)とまだまだ低い。それでも多くの日系企業がEVへの対応を急ぐのは、将来EVのシェアが増加してからでは自社技術を搭載することが難しいという懸念に加え、主戦場のガソリン車においても、自動運転を中心とした電装化が進んでおり低電力、低放熱の技術が強く求められているからだ。

また自動運転車やEVでは、従来の自動車と比較してタッチパネルが増える、より快適性が求められるなど、自動車の内装が変わっていくと予測する見方が多い。そうした中では、特段、自動運転やEVに特化した製品でなくとも、これら次世代自動車のコンセプトに合致する製品を有する企業にとっては、ビジネスチャンス拡大の機会となる。実際、強度を保ったまま、薄く、反射を抑え、きれいな局面を描くディスプレーを出展した企業は「自動運転やEVが普及することは、ビジネスチャンスになると考えている。当社のディスプレーは、次世代自動車の方が内装として映えると考えている」と話す。

米国では、2017年に新車販売台数が8年ぶりに前年を下回り、2018年は、2017年よりもさらに下回ると予測されている(2018年2月28日記事参照)。しかし、次世代自動車を主なターゲットに据えて出展した企業は、他の製品で活用していた技術を応用して、自動車業界に参入を試みているケースが多かった。従って、米国内での車載機器の販売シェアはまだ大きくない企業が多く、2018年の新車販売台数は過去と比較して減少すると見込まれている中でも、業績に対して特段の影響はないと答える企業がほとんどだった。

自動車部品メーカーの課題は人材確保

米国では、失業率が4.1%(2018年2月時点)と低く、人材不足が課題となっている。ジェトロが米国進出日系製造業を対象に行ったアンケート調査(2017年度)(注)によると、経営上の課題として、自動車部品メーカーが挙げたのは、順に「労働者(一般社員、技術者)の確保」(82.0%)、「労働者の定着率」(73.4%)、「賃金(給与・賞与)の上昇」(70.5%)と、いずれも人材に関するものだった。また、これら3項目の回答割合は、他業種も含めた全体の回答割合よりも高かった。

実際、今回出展した企業から、人材確保の難しさを指摘する声が聞かれた。特に、「自社の製品分野に関する知識や経験があり、適度な賃金」を採用の希望条件に掲げる企業が多く、これら条件に合致する人材確保の難しさが指摘された。知識や経験がある方が即戦力となること、同業他社との競争が激しく賃金が上昇していることなどが、これら希望条件の背景にある。そのほか、日本の本社とのコミュニケーションを、人材に関する課題に挙げる企業もみられた。

ジェトロは今後も、従来の自動車技術にとどまらず、データ分析やサイバーセキュリティー、人工知能(AI)、高度バッテリー技術といった先端技術も加えて、日本企業の自動車業界への販路拡大を支援していく予定だ。

(注)2017年度(第36回)米国進出日系企業実態調査の詳細はこちら

(河内章、赤平大寿)

(米国)

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