海外発トレンドレポート

英国における外装材市場調査
(ロンドン発)

2023年12月27日

1.サマリー

外壁用の外装材の需要は伸びている。特に木質外装材の人気は高い。断熱効果、耐火性能、あるいはデザイン性が高いものなど、市場機会があると考えられる。

2.市場規模・成長見通し

AMA Researchによると2017年のレンガを含む外壁材の需要は4670万平方メートルであった。その後パンデミックの影響で需要は横ばいであった※1

パンデミック後、建設市場は急速に回復した。Timber Developmentによると英国の木質外装材市場は、住宅と非住宅部門の両方で需要が増加し、2027年までに4%の年平均成長率を享受する見込みである※2。同様に、Mordor Intelligenceは、2023年から2028年の間に木質外装材市場は4%以上の年平均成長率を示すと予測している※3。木質外装材は家の改修用資材として急速に人気が高まっている。これは、その耐久性、コストパフォーマンス、及び持続可能性のためである※4

3.国内生産/輸入状況

2023年10月にStatistaが発表したデータによると、英国の粗面スレートブロック、装飾用スレート、外装材用スレートの2020年の生産量は合計26,401トンであった※5。英国政府の統計によると、建設資材の輸入は2022年には前年比で27.8%増加し、186億2100万ポンド(約3兆5,379億9千万円、1ポンド=約190円)から237億9800万ポンドになった※6。2022年は中国(20.4%)、ドイツ(9.5%)、イタリア(5.6%)、スペイン(5.4%)、トルコ(5.2%)が建設資材輸入相手国のトップ5であった。更に、輸入建設資材のトップ5は、電線(11.8%)、厚さ6mm以上のひき立て材(5.6%)、空調設備(3.5%)、スチール構造体(3.3%)、リノリウム床カバーリング(3.1%)であった※7。スチールやひき立て材は外装材の材料としても使われる。

4.主要メーカー/ブランド(競合情報)と価格帯

英国における主要メーカーの概要を表1に示す。

表1 外装材の主要メーカー
企業名 住所 概要
BSW Timber East End, Earlston, Berwickshire, TD4 6JA 木質外装材を含む認証木材製品を大規模生産※8
CAREA Group 英国での登録住所は特定できず。本社はフランス(Bièvres, Essonne)にある。 無機質複合材を使用した外装材等の製品を製造※9
Sotech Unit 2 Traynor Way, Whitehouse Business Park, Peterlee, County Durham, SR8 2RU 金属製のレインスクリーンクラディングを製造※10
Kingspan Group Greenfield Business Park N02, Bagillt Road, Greenfield, Holywell, Clwyd, CH8 7GJ 熱効率、火災安全性や耐久性が高い金属系外装材を製造している※11

5.売れ筋、最新トレンド

外装材の中でも特に木質外装材の需要が高まっている。木質外装材は、ほとんどメンテナンスを必要とせず、断熱効果を発揮し、建物を暖かく保つのに役立つ※12。これらの特性が、グリーンビルディング認証(LEED)に対する関心の高まりの中、評価されている。英国の建築規制では、セメントの配合が燃焼の危険性をもたらさないように厳しいガイドラインが定められており、外壁建設や外壁材に使用される材料は延焼の媒体になってはならない。このため、外壁には耐火性の高い材料が必要とされている※13。2022年に起きたグレンフェル・タワーの火災以降、外装材の耐火性能に対する関心が高まっている。

Mordor Intelligence によると、住宅・建物の様々なデザインに対応できる木製外装材の需要は増加すると予想されている※14

6.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)

輸入品は基本的に輸入とディストリビューションの両方を行う大手事業者によってビジネスそして一般消費者の両部門に販売されている。これらの大手事業者は国内製造品も扱っている。

7.主な輸入/卸売/小売業者

主な輸入販売事業者の概要を表2に示す。

表2 外装材の主な輸入/販売業者
企業名 住所 概要
Stark Building Materials UK STARK Building Materials UK Limited, Merchant House, Binley Business Park, Weston Road, Coventry, England, CV3 2TT 英国大手の建築材料販売事業者グループ。14のブランドを持ち、様々な建築材料を扱う※15
International Timber STARK Building Materials UK Limited, Merchant House, Binley Business Park, Weston Road, Coventry, England, CV3 2TT STARK Building Materials UK のブランドの1つ。木質外装材を含む、オーダーメイドの持続可能な木材・パネル製品の輸入・販売で英国をリードする業者。STARK Building Materials UK がInternational Timberとして取引を行っている※16
Travis Perkins Trading Company Lodge Way House, Lodgeway, Harlestone Road, Northampton, England, NN5 7UG 建設業界に建材を供給する英国大手の販売事業者。木質外装材やコンポジット外装材などを扱っている※17
Eurocell Group Eurocell Head Office and Distribution Centre, High View Road, South Normanton, Alfreton, England, DE55 2DT 建築製品の製造、販売、リサイクルを行っている。ポリ塩化ビニル外装材を主に扱っている※18

8.関連規制、規格・認証等

外装材に関する規制、規格・認証として以下を挙げることができる。

  • 建築法、建築規制※19
  • 工業標準規格: BS(British Standards)※20、ISO(International Organization for Standardization)※21
  • CEマーク、UKCAマーク、UKNIマーク:標準的な安全性と品質基準の認証マーク※22
  • FSC認証:適切な森林管理を認証する国際的な制度
  • 建設製品規制※23
  • NHBCスタンダード:NHBCに登録された新築住宅の設計及び建設に関する技術的要求事項及び性能基準を定め、これらを達成するための指針を提供※24

9.政府の奨励策、活用できるFTAや制度等

関連する奨励策、制度として以下を挙げることができる。

  • 建物のエネルギー効率向上奨励策※25
  • BREEAM: 環境価値評価制度

10.日本の中小企業にビジネスチャンスがあると考えられる製品例、参入時のアドバイス・留意点等

建築設計者の様々なデザインに対応できる外装材、及び耐火・難燃性の優れた外装材に市場機会があると言える。後者については、英国の安全その他の基準を満たす必要がある。グレンフェル・タワーの火災を受け、イングランド政府は18メートルを超す既存の住宅用建物の外装材に関連する生命安全リスクの対処に、2020年6月よりBuilding Safety Fund(BSF)の元、51億ポンドの資金援助を約束している※26 ※27。2023年7月からは11メートルから18メートルの高さの建物の外装材に対して、追加スキームとしてのCladding Safety Scheme(CSS)による資金援助が同様の目的を持って始まった※28 ※29。本スキームはロンドン外の18メートルの高さを超える建物のうち、2023年7月以降に資金援助への応募があったものにもBSFの代わりに適用されることとなった※30。その資金を使って、より安全な外装材に置き換えられることになる。


作成
ジェトロ・ロンドン事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ロンドン事務所が委託先London Research International Ltd.に作成委託し、2023年12月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびLondon Research International Ltd.は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびLondon Research International Ltd.が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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