特集:アフリカ進出における現地・第三国企業との連携可能性アフリカ経営トップに聞くビジネスの極意

2018年7月13日

アフリカ8カ国の現地企業トップにインタビューし、アフリカビジネスに取り組む心構えや経営の実態、日本企業との連携可能性を紹介する。インタビュー記事の全文は調査レポート「アフリカ経営トップインタビュー」を参照されたい。

モロッコ企業 ジェット・コントラクターズ(ゼネコン):トップに聞く
ファサード建築からスタートし大手ゼネコンに

財務・開発責任者 ニコラス・ケペル氏


モロッコの代表的な建築を手掛けるジェット・コントラクターズのニコラス・ケペル氏(ジェトロ撮影)

同社はモロッコの大手ゼネコン企業で、高層建築や木造建築、鉄鋼構造物、太陽光発電設備の建設に強みを持つ。モロッコで建設中の高速鉄道の駅の建設に携わっているほか、海外物流大手の物流センターの建設も手掛けている。タンジェにあるフランススポーツ用品大手デカトロンの物流ハブ施設や、カサブランカ国際空港のドイツDHLの大型仕分けセンターも同社が建設し、稼働中だ。また、モロッコの金融フリーゾーン、カサブランカ・ファイナンス・シティー(CFC)のメインタワーの建設も手掛けている。

サブサハラアフリカへも進出しており、建設中の案件も含め、マリでは病院やモロッコの領事施設、ナイジェリアでは高層タワー、コートジボワールでは大学、ギニアでは高級ホテル、マダガスカルでは病院など大型プロジェクトの実績がある。ケペル氏によると、サブサハラアフリカ地域でのビジネス活動の最大のリスクは取引相手の支払い能力の有無といった金融面の信用力だ。取引相手の財務能力の精査をモロッコの銀行や保険会社などの協力の下で実施するほか、信用力のあるパートナーと協業することで、債務不履行などのリスクを軽減している。

日本企業と協業実績もある。ワルザザード市の集光型太陽光発電(CPV)プロジェクトをモロッコ太陽エネルギー庁(MASEN)および住友電気工業と共同で進めており、住友電工の発電装置の支柱構造物を同社が製造している。ケペル氏は「技術力の高い日系企業をモロッコ国内はもちろんサブサハラアフリカにおけるパートナー企業の候補として、大いに歓迎したい」と述べた。同社のサブサハラアフリカ展開における強みは、長期的視野でプロジェクトにコミットする姿勢や、国内外のインセンティブなどを活用したファイナンスの構築ノウハウで、これらは日本企業のみならず海外パートナーに高く評価されると強調する。


ワルザザード市の集光型太陽光パネル(ジェット・コントラクターズ提供)
執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所
井上 尚貴(いのうえ なおき)
2014年、ジェトロ入構。農林水産・食品部 農林水産・食品事業推進課(2014年~2017年)、ジェトロ・ラバト事務所 海外実務研修(2017年8月より現職)。

エジプト企業 アラブコントラクターズ:トップに聞く
安全と品質管理でエジプトの発展に貢献

CEO兼会長 モハメド・モホセン・サッラーハッディーン・アブデル・ワッハーブ氏


エジプト大手アラブコントラクターズのワッハーブ氏(ジェトロ撮影)

同社はエジプト政府出資企業として、建設・コンサルテーション業を手掛け、建設(建物、ダム、灌漑など)、運輸、衛生を得意とし、その規模は中東アフリカ最大級だ。エジプト以外にも拠点があり、中東7カ国、アフリカ19カ国におよぶ。安全と品質管理を重視する企業風土を持ち、全品質管理(TQM)、品質保証システム、労働安全環境(HSE)マネジメントに重きを置き、国際規格ISO 9001、14001、18001を取得している。従業員は、エジプト本社と海外ネットワークを含めて7万2,000人、社訓は「健康、安全、環境」だ。

同社は創業時、アスワンの巨大ダムなど大規模国家プロジェクトを担い、国家の発展に貢献した。このプロジェクトのリーダーを務めたのがワッハーブ氏だった。その後は本来の事業から遠のき、エジプト軍に協力してキャンプや防御要塞(ようさい)を建設した。

国家プロジェクトがなかなか計画されない中、海外での活動に活路を見いだし、これまで中東やアフリカ23カ国でさまざまなプロジェクトを実行した。新しい市場を開拓し、さまざまなプロジェクトを遂行した結果、外貨獲得にもつながった。

2014年6月にエルシーシ大統領が就任して以降は、国内のプロジェクトにも再び参入するようになった。複数のメガプロジェクトに関わることになり、スエズ運河の開発、発電所、道路、新都市開発などを手掛ける。エジプト政府は国際的な信用が回復基調にあり、今後もさらなる新規案件を期待しているとする。自社の優位性として、信頼性、品質、技術力、そして周辺国との長年の信頼関係を挙げた。

ビジネス上のリスクについては、政治・経済の安定性と労働者の安全確保を指摘した。国家の安定にとって、政治・経済の安定は不可欠な要素とし、国内の需要拡大と海外ビジネスの両立が重要と強調した。

執筆者紹介
ジェトロ・カイロ事務所長
常味 高志(つねみ たかし)
1993年 ジェトロ入構。東京本部では、農水産部、展示部、技術交流部、海外調査部、企画部に所属。2007年から4年間、一般財団法人中東協力センター(日本サウジアラビア産業協力タスクフォース事務局)に出向。地方では、ジェトロ徳島、海外では、ジェトロ・カラチ事務所、ジェトロ・リヤド事務所の勤務経験を有し、2018年1月よりジェトロ・カイロ事務所長として赴任(現職)。

エチオピア企業 デリバーアディス:トップに聞く
エチオピア初のオンライン料理配達サービス

CEO フェレグ・ツェガエ氏


デリバーアディスを創業したフェレグ氏(ジェトロ撮影)

日本や欧米では一般的なオンライン料理配達サービスを、エチオピアで初めて起業した。2017年にアディスアベバ市内にオープンした日本食レストラン「SAKURA」もすでに同社と提携を始めている。起業の狙いは、米国で培ったITの知識とスキルをエチオピアで生かし、誰も挑戦していないビジネス分野で成功を収めることだ。フェレグ氏は米国コロラド州生まれ。ニューヨーク州のイサカカレッジで情報システムとビジネスを学び、卒業後はバージニア州のリッチモンド連邦準備銀行にITアナリストとして勤務。米国での2年間の社会人生活を経たのち、母親の母国に帰ったフェレグ氏は旅行者向けのITサービス「アリフモバイル」を起業した。同社に続く2社目の起業が「デリバーアディス」である。料理配達サービスがエチオピアで展開されていないことをチャンスと捉えた。

料理配達ビジネスはエチオピアで初ということもあり、顧客の正確な場所の把握や配達の遅れなど運営上の課題も多い。住所だけで顧客の正確な場所にたどり着くのは難しいため、自社でGPSシステムを開発した。サービスの維持・向上のため、フェレグ氏自身が良質なレストランとの提携可否を決めている。バイク便のドライバーは自社雇用して、仕事に遅刻しないなどの規律を教えるとともに、比較的高い賃金を支払うことで雇用の定着を図っている。困難も多いが、サービス立ち上げから3年弱で順調に売り上げを伸ばしている。

当地ではなじみのないビジネスへの理解を得るため政府と粘り強く交渉し、配達ビジネスの許認可を得ることができた。現在も通信環境の改善を政府に申し入れている。今後は、自社のGPSシステムとバイク便のドライバー網を生かし、扱う品目を書類や事務用品に広げるアイデアもある。配送管理に課題を抱えている日系進出企業があれば、GPSシステムを活用して物流面をサポートしたいと、日本企業との連携にも意欲をみせた。

執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所
脇田 陽平(わきた ようへい)
2013年、ジェトロ入構後、ビジネス展開支援部途上国ビジネス開発課でBOPビジネスなど担当。情報システム課で社内IT環境の整備など担当。2018年2月より現職。

ケニア企業 ビオフードプロダクツ:トップに聞く
品質にこだわった乳製品の大量生産を実現

前CEO ビノイ・ザカリア氏


ビオフードプロダクツ創業者のザカリア氏(ジェトロ撮影)

物流のコールドチェーンが未整備であり、加工食品の製造過程において品質が一定しないケニア。徹底的な契約農家の管理と最新機械の活用や従業員の教育の徹底によって、ケニアでも高品質の乳製品の大量生産に成功した企業が現れた。高まる健康志向や中間層・富裕層の増加に伴って、今後も売り上げを堅調に伸ばしていくことが期待される。

ザカリア氏は食品メーカーに勤務後、最高級の品質の製品を完璧に作りたいという思いから起業。インドやヨーロッパから酪農の技術者やコンサルタントを招いて商品開発を繰り返したが、創業当時は高品質の乳製品を買い求める中間層や富裕層がまだ少なく、利益が上がらなかった。創業から5年経過したころから商品価値が認められ、大口注文を得るようになった。

徹底的に品質と衛生管理にこだわり、食品添加物や人工香料は使わない。健康志向の高まりを受け、大手ホテルでも同社製品が並ぶようになった。完璧な品質を追求したことを成功の最大要因に挙げる。原料確保にこだわり、契約農家には徹底的な原料の品質チェックや技術指導を行う。流通過程では、徹底した品質管理のこだわりから代理店などの卸を利用せず、自社で一括して小売りに直接販売している。近隣国では、ウガンダ、タンザニア、ルワンダなどにも輸出している。従業員教育を重視し、すべての製造過程でHACCP(危害分析管理重要点)に基づく管理が徹底される。

IOT(モノのインターネット)が組み込まれた最新鋭の機械が稼働しており、さらなる品質保全、コスト削減などを目指す。高まる健康志向や中間層・富裕層の増加に伴い、今後も売り上げを伸ばすことが期待される。課題としては、高額な借り入れコスト、通関、治安や政治不安、インフラ未整備、非関税障壁などを挙げる。政府による突然の税制改正や規制の導入も危惧している。

執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所
島川 博行(しまかわ ひろゆき)
2006年、ジェトロ入構。2009年からジェトロ盛岡にて3年間海外市場開拓を担当。2012年からJICAタンザニア事務所への出向でタンザニアに2年間駐在し、エネルギー・産業開発・民間連携を担当。その後は在ケニアのジェトロ・ナイロビ事務所に転勤し、貿易投資相談、情報発信、会社設立支援などを担当。ケニアおよび東アフリカのポテンシャル・ビジネス機会に関する情報を積極的に発信している。

南アフリカ共和国企業 ファイアーペイ(ICT):トップに聞く
拡大するICT 市場と若手起業家の広がり

CEO コブス・エラース氏


ファイアーペイCEOのコブス・エラース氏(ジェトロ撮影)

ファイアーペイは、携帯電話を利用した決済サービス「スナップスキャン(Snap Scan)」を提供している。サービスの仕組みは、同社と契約した小売店が店ごとに付与されたQRコードを店頭に設置。消費者は会計の際にスナップスキャンの携帯アプリのカメラを利用してQRコードを「スキャン」し、支払額を携帯から入力。事前に登録した個人の銀行カードを通じて決済されるようになっている。消費者側の手数料・送金料負担はゼロで、決済も即座に完了する簡易さがウリだ。小売店側は決済ごとに3%の手数料を同社に支払う必要があるが、専用の電子端末などを購入する必要がないことから初期投資を抑えられる。

スナップスキャンの着想は、南アの低所得者層が日用品を購入するインフォーマルな店舗の事業主に対して、より安価で安全な金融サービスを提供したいという思いからだった。その後、スナップスキャンは携帯電話の普及に伴って、2014年には飲食店などフォーマルセクターにも導入が広がり、現在国内全体で4万を超える事業者が利用している。2016年11月には、南ア最大手のスタンダード銀行が同社の筆頭株主になった。これを受け、「同銀行が有する巨大な顧客ネットワークを活用してスナップスキャンを広めることが可能になった」。

変化が速く、競争が激しいフィンテック分野で同社の強みは「常にイノベーションを起こし続け、素早く市場に製品を提供すること。そして顧客との直接の対話を重視し、顧客ニーズを絶えずくみ取っていくことが重要だ」。今後は、企業間の決済や、保険、預金の分野にも応用していきたいと意欲をみせている。また、周辺国でのサービス展開も視野に入れている。日本企業との協業にも関心があり、訪日時に見た非接触型ICカードシステムをはじめとした日本の洗練されたICT(情報通信技術)には圧倒されたと語った。

執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
髙橋 史(たかはし ふみと)
2008年、ジェトロ入構後、インフラビジネスの海外展開支援に従事。2012年に実務研修生としてジェトロ・ヤンゴン事務所に赴任し、主にミャンマー・ティラワ経済特別区の開発・入居支援を担当。2015年12月より現職。南アフリカ、モザンビークをはじめとする南部アフリカのビジネス環境全般の調査・情報提供および日系企業の進出支援に従事。

ナイジェリア企業 ババン・ゴナ(スタートアップ企業・農業支援):トップに聞く
小規模農家を育成し、高品質な農産物を販売

マネージングディレクター コラ・マーシャ氏


ババン・ゴナのコラ・マーシャ氏(ババン・ゴナ提供)

ババン・ゴナは、コラ・マーシャ氏が2010年、ナイジェリアの農業に可能性を見いだし創業した。広大な土地、長期間続く人口増加とそれに伴う労働力・食品消費の伸びから、「農業はナイジェリア経済のエンジンになる」と同氏は断言する。

同社の活動の特徴は、対象を小規模農業に特化している点だ。零細農家の作物の規格がそろわず量もまとまらないため、販売効率が上がらず、所得は低いままだった。同社はこうした農家をグループごとに組織化し、グループ単位で経営を支援している。同社の支援では農機具や種子などを提供し、効率的な収穫作業や、他の農家と種子をそろえることで、品質・規格を統一。また農産物の作付け、収穫、育て方に関する有効なノウハウを提供することで、収穫量の増加、品質の向上、作業効率性の改善にもつなげる。また、英国、米国、ドイツなどの援助機関による農業技術指導も取り入れている。さらに、収穫した作物を担保に資金を貸し付け、資金繰りが苦しくなる収穫期の生活を支援。限られていた販売先も、同社が紹介することで販路開拓につながる。

同氏にアフリカビジネスの魅力を尋ねると、即座に「成長」と「起業家精神」との答えが返ってきた。「人口の成長性は疑う余地はない。そして近年、ナイジェリア経済が停滞していたのは事実だが、農業は影響を受けていない。不況の主な原因は石油産業であり、農業セクターをみれば確実に成長している」と力説する。さらに、「日本の製品、技術を活用したい起業家はたくさんいる。ババン・ゴナも日本の農機や農業技術に興味があるし、またアフリカの起業家に投資してくれる企業も大歓迎だ」と話す。同社には欧米から多くの投資が集まっているが、アジアからはまだだ。日本企業にも協業のチャンスがあるといえそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
山村 千晴(やまむら ちはる)
2013年、ジェトロ入構。東京本部で勤務後、2015年2月よりジェトロ岡山にて地元中小企業の輸出支援を中心に担当し、2017年4月より現職。主にナイジェリア、ガーナでの日系企業ビジネス支援に従事している。

コートジボワール企業 ラ・フェルム・デュ・ラック(食品):トップに聞く
国産チョコレートをニッチ市場に売り込み

ファンタ・ベルナ・ド・フォンロ氏


チョコレート作りへの挑戦を始めたド・フォンロ氏(ラ・フェルム・デュ・ラック提供)

カカオ生産量が世界一で、食品関連産業がGDPの25%を占めるコートジボワールだが、農産品の多くはそのまま換金作物として輸出されている。国際市況の変動による影響を回避するために国内での食品加工が求められる中、ラ・フェルム・デュ・ラックはチョコレート作りに挑戦する。

国内最大都市アビジャンにある小さな工場でボンボンショコラ型のチョコレートの生産を開始したのは2016年秋。市内の高級ホテル内に置く店舗での販売は順調に伸びている。狙うのは国内市場だ。原料のカカオは、地方の小規模事業者や女性の生産組合から仕入れており、規模が小さく取り扱いが容易であることを強みにUTZ認証(注)とフェアトレード認証を受けている。カカオをペースト状にする工程以外は全て手作業で、生産規模は月800キロとまだ少ない。こうしたチョコレートに価値を見いだして購買する層が、国内ではまだ薄いことは確かだ。しかし、国内に加工業者がまだ少ないという課題や、「ストーリー性のある高付加価値商品」が先進国で人気が高いことを考慮に入れると、国内での人気を高める自信があるという。拡大する富裕層の中でも、ストーリー性に共感する人たちをターゲットに販売を伸ばしている。

現在、同社の事業は主に3つで、農産品の生産、食品や化粧品原料の加工、農産物・食品の流通・貿易・販売を行っており、年商1,000万ドルを見込む。食品や化粧品原料の加工に関しては前述のチョコレート製造のほか、契約農家からオーガニック認証(BIO認証)を受けたココナツやシアの実を買い付け、食品や化粧品原料向けにコールドプレスでバージンオイルを抽出している。チョコレートと同様、高付加価値商品でニッチマーケットを狙う。ド・フォンロ氏は学生時代に日本でインターンシップの経験がある。日本にも同社のコンセプトに関心を持つ層が少なからずいるとみており、日本で開催された食品関連の展示会にも出展するなど日本市場への展開を進めようとしている。

注:
コーヒー、カカオ、茶類を対象とした適正規範の実践と管理、安全で健全な労働条件、児童労働の禁止、環境保護を通じた持続可能な製品を提供することを目的にした認証。

ラ・フェルム・デュ・ラックのチョコレート(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ企画部地方創生推進課(元ジェトロ・アビジャン事務所)
石井 絵理(いしい えり)
2013年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部途上国ビジネス開発課(2013~2015年)、ジェトロ関東(2015~2016年)、ジェトロ・アビジャン事務所海外実務研修(2016~2017年)を経て、2017年10月より現職。

カメルーン企業 ナナ・ブーバ・グループ(コングロマリット):トップに聞く
幅広く事業を展開、「垂直統合」でさらなる成長目指す

CEO アボ・アマドゥ氏


カメルーンを代表する複合企業グループNBGのアボ・アマドゥCEO(ジェトロ撮影)

ナナ・ブーバ・グループ(NANA BOUBA Group、以下NBG)は、カメルーンを代表する複合企業グループだ。事業の柱は、消費財の製造や輸入販売、食品製造・農産品生産、建設・インフラで、傘下には、食品・日用品の輸入流通や、家庭用せっけん、清涼飲料水、トマトペースト、パームオイルなどの製造、食肉加工、不動産、建設など8つの子会社がある。NBGは国内18カ所に販売拠点、63カ所に倉庫を所有し、近隣のチャド、コンゴ共和国、ガボン、中央アフリカにも流通網を拡大している。累計で約430億CFAフラン(約86億円、1CFAフラン=約0.2円)を各事業に投資し、計2,000人を雇用。売上高は1,500億CFAフラン(2015年)に上る。

これまでのNBGの成功のポイントとしてアボ・アマドゥ氏は3点を挙げる。第1は、創業者ナナ・ブーバ氏の明確で人道主義的なビジョン。同氏は投資を通じて「消費者、コミュニティー、政府、社会、全てに利益をもたらす」という視点を重視し、環境への負荷が低く、企業の社会的責任を意識した経営を心掛けた。第2に、アフリカ全体の「成長の資産」ともいえる若者のエネルギーを取り込んだこと。雇用と人材育成、マーケットの両面で、若者の活用は欠かせない。第3が、企業倫理を重視し、あらゆる利害関係者から信頼を得ることができたこと。抽象的ではあるが共通するのは、アフリカでは決して一般的とはいえない「長期的視野」に立った経営といえそうだ。

MBGはこれまで、さまざまな基礎消費財を最終製品または半完成品として輸入した上で、現地の好みや消費習慣に合わせて最終調整し、中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)域内の強固な流通網を通じて販売することで成長を遂げてきた。今後このビジネスモデルに加えて、原料から流通・小売りまでの「垂直統合」型経営を目指すことにしている。

執筆者紹介
ジェトロ・アビジャン事務所長
山田 尚徳(やまだ なおのり)
1997年、ジェトロ入構。東京では国際貿易・投資動向の調査分析や日本への外国企業誘致に従事する。ジェトロ大阪本部(2001~2002年)、ジェトロ・パリ事務所(2003~2008年)にも勤務経験あり。2015年9月より現職。仏語圏を中心に西・中部アフリカ18か国を対象に、日本企業の進出支援に向けた各種事業の実施、調査・情報取集を行っている。