米国食品安全強化法セミナー:対策編 FSVPのポイント解説
ジェトロは、農林水産省補助金事業として、2017年8月22日に東京において「米国食品安全強化法セミナー:対策編 FSVPのポイント解説」を開催しました。当日は、輸出商社をはじめ、米国向け食品を製造/加工している事業者等、約50名(ライブ配信では約40名の視聴者)が参加しました。
セミナーでは、ジェトロによるFSMAの概要と最新の動きについての説明に続き、FSMAに精通した専門家によって「外国供給業者検証プログラム」(FSVP)のポイントについて、詳細な解説が行われました。
- (参考)外国供給業者検証プログラムについての最終規則(仮訳) (845KB)(2015年12月28日)
講演1.「食品安全強化法の全体概要と最新の動き」
- 講師
-
ジェトロ・シカゴ事務所 ディレクター 笠原 健
- 略歴:
2016年7月から現職。食品安全強化法に関する調査や制度周知も担当。
- 略歴:
- 講演概要
- FSMAの全体概要とともに、適用のスケジュール(2017年5月からFSVP、2017年9月から小規模事業者へのPCHF、2018年1月から農産物安全基準、2018年3月から小規模事業者へのFSVP)が改めて解説された。また、FSVPとしては、加工食品にかかるPCHF規則だけでなく、農産物にかかるPSS規則への理解も必要となる旨が伝えられた。
講演2.「FSVPでは何を検証するのか」
- 講師
-
ペリージョンソンホールディング株式会社
ペリージョンソンレジストラー
食品安全プログラムマネジャー 海澤 幸生 氏- 略歴:
FSPCAから承認を受けたPCQI養成トレーニングコースのリードインストラクター。
ISO9001、ISO22000、FSSC22000の主任審査員として多くの審査経験を有している。また農林水産省のFSMA部会の委員を務めるほか、食品安全に関するレポートを寄稿するなど、審査業務以外においても経験や知見を活かした活動を行っている。
- 略歴:
- 講演概要
-
- FSMAにおける外国供給業者検証プログラム(FSVP)規則の位置づけ
FSMAは、農産物生産者、食品の食品製造/加工梱包、保管業者だけでなく、輸入業者に対しても食品安全に関する責任を負わせている。FSVPを適切に実施するためには、FSMA全体を理解することが重要となる。 - FSVPのための基礎を構築する
FSVP規則における輸入業者(FSVP Importer)とは、米国への輸入食品の米国での所有者または荷受人だが、それがいない場合には外国の所有者の代表者または米国代理人、あるいは荷受人となる。購入契約書などを出して食品を購入している場合にはスーパーなどの小売り業者もFSVP Importerになり得る。FSVPは輸入業者の適格者(QI)が行うことになるが、食品に関するハザードやハザード分析を十分理解し検証できる者でなければならない。QIは輸入業者の従業員であってもよいが、日本国内の輸出商社や卸売業者が代わりにQIとして活動することも可能。 - FSVP規則の概要
対象となる輸入業者は、食品のハザード分析を行い、外国供給業者のパフォーマンスやリスクの評価に基づき外国供給業者を承認する必要がある。また承認された外国供給業者から輸入することを文書化し、適切な検証活動、是正措置、再評価を実施する。あわせて、DUNS番号を取得しACEシステム上でFSVP輸入業者であることを特定する。FSVPは一部の適用除外食品を除き、すべての食品に適用されることになるため、まずは自身がFSVPの対象となるのか、修正要件の対象となるのか、適用が除外されるのかを確認する必要がある。 - ハザード分析と外国供給業者の承認・評価
輸入業者が行うべきこととして、ハザード分析と外国供給業者の承認・評価がある。ハザード分析にあたっては、他社(外国供給業者を含む)のハザード分析に依拠することも可能とされている。FSVPのハザード分析で大切なことは、扱っている製品の特性(ハザードの制御方法)を知ること、また製品の原材料の特性(微生物、残留農薬、重金属、添加物、金属異物など)を理解することである。特定が難しい場合には、外国供給業者と十分コミュニケーションをとることが重要となる。外国供給業者の承認・評価にあたっては、彼らの製品製造・管理の手順、米国の輸入警告などの食品安全規則への適合状況、食品安全履歴(監査結果、対応の迅速性)などをもとに総合的に判断する。 - 外国供給業者の検証の実施
検証活動には、実地監査、サンプリングおよび試験、食品安全記録類の文書監査などがある。ただし、深刻なハザード(SAHCODHA)に対しては、最初に食品を輸入する前、およびその後少なくとも年1回の実地監査が必要となる。実地監査は適格監査人(QA)によって行われなければならない。 - FSVPを構築・運用する上でのポイント
FSVP対応を円滑に進め実効性を高めるためには、輸入業者は供給業者とできるだけ早くFSMAについて情報交換することが重要である。輸入業者は、供給業者によるPCHF対応(食品安全計画の構築・運用)を促し、協力体制を築くことも必要となる。また、検証のための食品安全に関する理解を深めることも求められる。
- FSMAにおける外国供給業者検証プログラム(FSVP)規則の位置づけ
質疑応答
主な質疑応答は次のとおり。
毎月1-2回、約60社300品目をコンテナにまとめ米国向けに送っている。最近になって、2社程のメーカーから「PCHFの準備ができていないため輸出をやめたい」という話があった。何らか説得する方法はないか。
PCHFはHACCP以上のものも求められているため、ハードルが高いかもしれない。ただ、その企業はこれまで安全ではない食品を作っていたわけではないだろう。なぜ安全な食品を作れてきたか、に立ち返ってもらえれば答えはあるはず。
- 資料p.49 基準のFSVP要件について。FSVPに必要なハザード分析は、危害分析表のみでよいのか、それ以外にも製品説明書やフローダイアグラム、原料説明書なども必要なのか
- 資料p.49、およびp.108 外国供給業者のパフォーマンスの評価にあたり、FDA規則の適合性は、どのように調べていけばよいか。
- 検証活動について
- 少なくとも3年ごとに検証すればよいのか
- 資料p.108 検証活動としての「その他」として、第三者認証(FSSSC22000,BRC)を入手することで輸入業者の検証活動と考えてよいか。
- 供給業者が出荷ごとにロット検査している。試験結果をもとにした検証として、供給業者による試験結果を1年ごとに入手することでよいか。
- 規則上は、ハザード分析をすること、と書かれているのみ。機密情報として開示が難しいという趣旨での質問だと思うが、危害分析表にハザードに関する情報が盛り込まれていれば大丈夫ではないか。
- 食品安全要件の調査にあたっては、米国FDAのウェブサイト(Supplier Evaluation Resource)が参考になる。この警告やリコールに、組織の製品や組織の不具合が掲載・報告されていないか調べるのが一般的。
-
- 「少なくとも3年ごとに」というのは、検証活動の内容の再評価のこと。検証活動の頻度は輸入業者の判断による。
- 第三者による監査報告書が食品安全を担保している(管理すべきハザードが適切に管理されている)という記述がされていれば可。また、第三者認証機関による監査を、「その他の検証活動」としてではなく「現地監査」の代用として活用すること可能。
- 1年分まとめて検証するということが妥当かどうかは判断による。適時実施した方がよいかもしれない。食品製造業者は、一般的にロットごとに確認するため、受け入れ時に確認するのが一般的。
米国向けに商社経由で輸出。
- 食品安全計画を作成し、輸入業者から要請があれば提出が必要と理解している。どこまで開示してよいか、開示すべきなのか、判断と対応に困っている。ジェトロに問い合わせたところ、輸入業者の判断になるためコミュニケーションをよくとるように、との回答があった。商社とは守秘義務契約を締結しているが、社外秘の部分が非常に多いため、品質保証部としては情報開示に後ろ向き。「FSSC22000の報告書で代用できないのか」、「これ以上の情報開示はできないので米国向け輸出をやめてしまえ」との声もある。どうすればよいか。
- 並行輸入品が多い。輸入業者は、外国供給業者を承認するとのことだが、輸入業者が我々を承認した、ということは文書あるいは何らかの通知がくるのか。
- 食品メーカーの中には、機密保持契約を締結していても、ノウハウを開示したくないというケースは多くある。食品安全にかかわる情報なのか、検証のために本当に必要な情報なのかどうか考えていただきたい。例えば、食品製造工程で微量の粉末物を多数混ぜて製品化している場合、その配合率等が企業秘密であることがある。それらがハザードとして同じと考えられる場合は、個別には出さなくてもまとめてもよいだろう。また、監査報告書での代用は、その報告書に記載されている情報量によっても変わってくる。FSMA第307条は、第三者による監査制度に関するものであり、将来的にFSVPの検証に役立つかもしれない。
- 規則上、通知義務はない。輸入業者が、その外国供給業者から輸入することを決めるだけ。並行輸入については認識されているが、解決は難しい。
FSVP、FSMAのサプライチェーン全体での安全確保を前提にすると、輸入業者との間でのコミュニケーションを密にすることが前提となってくるため、今後減ってくると予想されるとの見方もある。
- 資料p.115 「必要性がある場合、以下の条件で一時的に未承認の外国供給業者を使用できる」とある。現在、すでに適用期日が過ぎているものは、一時的にOKとなるのか。
- 輸入時または輸入後に、商品に対してFSVPを行っているかという質問があった場合、「あと1カ月以内に承認します」といった回答が認められるのか、その対応期限は決まっているか、また罰則はあるか。
- この規則の趣旨は適用期日を過ぎたものを認めるものではない。「輸入をしたいという食品/外国供給業者について、本来検証が終わってから承認すべきものだが、検証活動に時間を要するようなもの」を対象としている。例えば、季節製品のように製造頻度が低いものの場合、検証にも時間がかかることがあるが輸入しないといけないという状況があるだろう。そのような場合は、「検証活動は進めているが、最終的な結果は出ていない状態」として、結果が分かるまでは承認していなくても輸入ができるということ。検証活動を進めていることを記録に残すことは必要となる。例えば、PCHFの適用期日を迎えているが、書類の作成がまだできていない、書類が入手できていないといった場合、検証がOn-goingであることを記録として残しておく、また説明できる状態にしておけば問題ない。ただし、将来的には承認されることが前提との説明がされている。
- 程度は分からない。規則上、「何カ月以内に承認できればよい」という規定はない。
- FSVPのQIは、社内認定でよいか。登録や第三者による認証が必要か。
- FSVPのQIは第三者機関での代理も可能とのことだが、外国供給業者自身がなることは禁じられているか。
- 複数の企業がFSVP輸入業者になりうる点について
- 輸入毎にFSVP輸入業者が変わる場合、なんらかの手続き、登録が必要なのか。
- 同じ製品を今月はA社、来月はB社というケースがある。具体的は直接の輸入者がいったん在庫して売るか、事業所に輸送するか話し合って決めており、都度FSVP輸入業者が変わる場合がある。FSVP輸入業者の変更については、両社間で合意していればよいのか、なんらか手続き、登録が必要なのか。
- 零細輸入業者の定義に、売上高は米国内での販売のみではなく、全世界を含むのか。また売上高に子会社や関連会社も含むとあるが、輸入業者が子会社の場合、親会社も含むのか。
- 規則上、標準化カリキュラムの受講や登録が要求されているものではない。
- 現地監査を外国供給業者が行うことは禁止されている(当該供給業者による自己レビューは禁止)。ただし、当該供給業者が検証に協力するために検査証明書や製造記録を提出することは認められている。
-
- 輸入時にACEシステムでDUNS番号を入力し、特定してもらうことになる。
- ACEシステムで輸入毎に登録することは可能。ただし、検証(手順書の作成、実施、記録)は両社が行わなければならず、またメーカー側も両社からの検証を受けないといけなくなるため、複雑性・煩雑性が増してしまうのでは。
- 米国だけではなく全世界の売上高、子会社だけではなく親会社の売上高も含む。