カナダの食品関連の規制
1. 残留農薬
アルコール飲料は、残留農薬規制の対象となります。残留農薬に関して、カナダはポジティブリスト制度を適用し規制しています(有害生物駆除製品法、Pest Control Products Act:PCPA)。許容残留農薬の登録あるいは事前相談は、保健省病害虫管理規制局(Pest Management Regulatory Agency:PMRA)のElectronic Pesticide Regulatory System(e-PRS)によって申請するか、電子メールで問い合わせることができます。
なお、同局では農薬最大残留基準値データベースを公開しており(最新情報は関連リンク参照)、ワインの農薬最大残留基準値は調査時点で次のとおり2種類が規定されています。
ワインにおける残留農薬の最大残留基準値
化学物質名
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最大残留基準値 (ppm)
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Iprodione
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5
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Procymidone
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1
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2. 重金属および汚染物質
アルコール飲料は、重金属および汚染物質規制の対象となります。重金属および汚染物質は、食品医薬品規則-食品の不良(DIVISION 15 Adulteration of Food)によって規制されており、カナダ保健省食品部化学安全局(Bureau of Chemical Safety, Food Directorate)が管轄しています。
同局では、重金属および汚染物質を「汚染物質、不純物、化学汚染物質」と定義しており、含有禁止物質および含有許可物質とその最大残留基準値を食品の種類別に次の順で提示しています。関連リンクの「その他参考情報」を参照してください。
- 食品の汚染物質および不純物リスト
パート1:食品に含まれてはならない物質リスト
パート2:食品への含有最大基準が設けられている物質リスト
- 食品の化学汚染物質の含有最大基準
なお、酒類を含む発酵食品に天然に存在する物質であるカルバミン酸エチルについては、カナダ保健省が次のとおり基準を定めていますが、オンタリオ州酒類管理委員会(LCBO)では、特に日本酒に関してカナダ保健省よりも厳しい基準を設定しているため注意が必要です。
カルバミン酸エチルの最大基準
分類
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カナダ保健省
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LCBO
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日本酒
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200 ppb
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30 ppb
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蒸留酒
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150 ppb
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150 ppb
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3. 食品添加物
アルコール飲料は、食品添加物規制の対象となります。食品医薬品規則-食品添加物(DIVISION 16 - Food Additives)で、規制されています。カナダで使用できる食品添加物(着色料含む)のほか、その使用方法および限度量は、カナダ保健省の「許可済み食品添加物リスト」(カナダ保健省 「食品添加物について」リンク内)に公開されています。規定量を超える使用、同リストに記載のない食品添加物の使用、規定されている使用法以外の使用を行う場合は、カナダ保健省に事前に申請する必要があります。
なお、人工着色料の使用にあたってはカナダ保健省からの認定証の発行が義務付けられていましたが、カナダ保健省は2016年12月14日付で食品医薬品規則を改正し、認定書発行の義務付けが即日廃止されることになりました。
4. 食品包装(食品容器の品質または基準)
アルコール飲料は、食品包装規制の対象となります。食品用の容器・包装に関しては、食品医薬品規則-食品包装材(DIVISION 23 - Food Packaging Materials)で食品衛生・安全性および品質基準に合致することが求められており、カナダ保健省健康製品食品部食品局(HPFB)およびカナダ食品検査庁が管轄しています。
食品の包装材が安全でかつ食品医薬品規則の品質基準に合致することは食品販売者(製造業者、卸売業者)の責任となっています。2014年7月2日までカナダ食品検査庁による包装材の安全性評価のための市場導入前審査が義務付けられていましたが、現在は乳児用調製粉乳(フォーミュラ)や新規食品などの一部の食品を除いて行われていません。ただ、企業が希望すれば、HPFBは包装材の審査を行い、審査基準を満たせば同局から使用に異議がない旨の書面「LONO(Letter of No Objection)」の受理が可能です。
なお、カナダ保健省では包装材に使用できる材質のポジティブリストを提示していませんが、生産者へのサービスの一環として、2003年11月1日以降LONOを発行してきたポリマーのポジティブリストを公開しています。
また、カナダ食品検査庁でも2014年7月2日までに承認された包装材の名称および製造企業名を公開していますが、リストは更新されていないため、商品名などの正確性については直接各企業へ確認する必要があります。
5. ラベル表示
カナダのアルコール飲料のラベル表示は、消費者包装表示法および規則(Consumer Packaging and Labelling Act & Regulations)、食品医薬品法および規則(Food and Drugs Act & Regulations)、蒸留酒貿易法(Spirit Drinks Trade Act)によって規定されています。
2016年12月14日、食品医薬品規則の栄養ラベル表示、原材料表示および人工着色料の要件変更が施行され、新ラベル表示への移行に5年間の猶予期間が設けられることになりました。猶予期間中は新旧どちらのラベル表示も可能ですが、2021年12月14日以降は、すべての包装済食品は新規則に準拠しなければなりません。ここでは新規則について概説します。
ラベル表示は、いかなる包装済み商品にも適用される「基本ラベル表示要件(Core Labelling Requirements)」、「強調表示および陳述(Claims and Statements)」の部分と食品分野別に定義される「食品群別ラベル表示要件(Food-Specific Labelling Requirements)」から構成されています。商品に応じてそれぞれの要件に沿った表示が求められ、英語、フランス語による併記が義務付けられています。
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基本ラベル表示要件
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- 2カ国語表記
- 品名
- 原産国
- 日付刻印と貯蔵方法
- 事業者名および住所
- 照射食品
- 読みやすさと表示位置
- 原材料表示およびアレルギー源
- 容量
- 栄養表示
- 甘味料
- 食品添加物
- 強化食品
- 等級
- 商品認識基準
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強調表示および陳述
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- 広告
- アレルギー源およびグルテン
- 組成および品質
- 健康強調表示
- 生産方法
- 写真、イラスト、ロゴおよび商標
- オーガニック
- 原産
- 栄養成分
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食品群別ラベル表示要件
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アルコール類をはじめとして19の食品群別のラベル表示要件が提示されています。アルコール類に特有なラベ表示ル要件として提示されている項目は次のとおりです。
- 品名
- 原材料
- アレルギー源
- 栄養表示
- アルコール量
- 広告
- 自主的強調表示および陳述
- 商品別情報(ビール、ブランディ、ジン、リキュール、ラム、ウォッカ、ウイスキー、ワイン)
- 州別アルコール専売公社
なお、消費者包装表示法および規則(Consumer Packaging and Labelling Act & Regulations)は同食品安全法および規則へ統合されます。一方、食品医薬品法および規則(Food and Drugs Act & Regulations)、蒸留酒貿易法(Spirit Drinks Trade Act)に変更はないため、2019年1月15日以降はカナダ食品安全法および規則、食品医薬品法および規則、蒸留酒貿易法を参照する必要があります。
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カナダ食品安全規則により変更される主要点は次のとおりです。
- 「包装済」(prepackaged)および「消費者向け包装済」(consumer prepackaged)という言葉が新たに定義されます。
- 「包装済」(prepackaged):消費者向けにあらかじめ包装されたものを含め、個人や団体に対して販売される容器包装されたもの。製造業向けやフードサービス向けの商品が該当します。
- 「消費者向け包装済」(consumer prepackaged):個人に対して販売される容器包装されたもの。小売商品が該当します。
カナダ食品安全規則に統合されることになる乳製品規則および加工食品規則では、prepackagedは小売店舗用販売食品に限定されているのに対し、食品医薬品規則では、prepackaged productは個人や団体に販売される商品と定義されており、整合性を欠いていました。これを是正するため、新規則では定義の統一化が図られています。
カナダ食品安全規則の要件確認の際には、当該規則が「包装済」(prepackaged)食品すべてに適用されるものか、あるいは「消費者向け包装済」(consumer prepackaged)食品のみ、もしくは「包装済で消費者向け包装済以外の」(prepackaged other than consumer prepackaged)食品のみに適用されるものかを確認する必要があります。
- トレーサビリティの観点から、ラベルには次の情報掲載が求められます。
- 品名(カナダ食品安全規則または食品医薬品規則で定義される名称。あるいはこれらの規則で定義されていない場合には、食品の通称もしくは機能を示す名称。)
- 製造事業者もしくは製造委託元事業者の名前および住所
- アルファベットや番号で提示されるロット番号(消費者向けにあらかじめ包装された商品のみ)
6. その他
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食品安全・衛生規則
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食品事業者は提供する食品の安全性を確保することが求められています。畜肉や水産品など、食品の加工において連邦政府への施設登録が必要である食品分野では、登録の際に連邦政府の定める衛生管理実施基準に準ずることが求められていますが、アルコール飲料をはじめとする連邦政府への登録を必要としない食品分野では、安全性の確保は求められるものの、具体的に衛生管理実施基準が定められているわけではありません。そこで、カナダ食品検査庁では、連邦政府への登録を必要としない分野の食品群を「非登録分野」(Non-federally-registered) と総称し、これらの食品群に対する食品安全ガイドを公開しています。この食品安全ガイドは、FAOおよびWHOにより設置された国際食品規格の策定を行うCodex委員会のHACCP方式による衛生管理実施基準に準じており、非登録分野の食品業界が効率的な食品安全予防管理システムをデザイン、開発、実施できるように策定されています。
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なお、2019年1月15日に施行される「カナダ食品安全規則」により、輸入者には2020年7月15日からトレーサビリティのための記録保管が義務付けられます。
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同規則第5章(Part 5)ではトレーサビリティについて定めており、輸入者は商品名、ロット記号、輸入者もしくは製造者名および住所を記録保管するとともに、商品にこれらの情報をラベル表示することが求められています。さらに、商品の流通履歴の記録保管を行うため、商品の販売者および購入者名、住所、販売/購入日時の記録を保管しなければなりません。