ジェトロ 2022年度 海外進出日系企業実態調査 ―全世界編― 物価高とゼロコロナが重荷。供給混乱が地産地消を加速

2022年11月24日

本調査について

  • ジェトロは2022年9月、海外86カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店、駐在員事務所)1万9,143社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。7,173社より有効回答を得ました(有効回答率37.5%)。
  • ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策、環境や人権尊重を軸とする法規制の整備など、国際ビジネス環境がますます複雑化する中、海外の日系企業の業績はどう変化し、新たな課題にどう対応しているのか。その最新動向を定量的に把握できる、本邦唯一の調査です。

本調査の結果ポイント

1. ゼロコロナ政策で業績見通し悪化。事業拡大の足かせに。
海外進出日系企業約7,000社のうち、65%が2022年に黒字を見込むも、中国での業績悪化が際立つ。部材の供給制約やコスト高により自動車部品産業などで赤字企業が拡大。
今後1~2年で、事業の「拡大」を見込む企業は全体の45%。新型コロナ前の水準に戻らず。中国では、ゼロコロナ政策に伴う業績悪化、先行き不透明感の高まりで、投資意欲が著しく減退。
2. サプライチェーン見直しと経営現地化が加速。アジアで駐在員を減らす動きも。
全体の過半数、製造業では企業が今後、「サプライチェーンの見直し」に取り組む。原材料や輸送コストの高騰、供給途絶リスクの顕在化で、調達、生産、販売の現地化戦略が加速。
今後1~2年で、駐在員をコロナ禍前よりも減らす半面、現地人員を拡充する動きが進む。新型コロナ禍での駐在員退避や一時帰国、リモート化の定着が現地化を加速させた側面も。
3. グリーン調達を行う企業が前年比2倍超。未対応は機会損失リスクに。
人権デューディリジェンス(DD)を実施する企業は3割。法制化が進む欧州などで、取引先からの要請が人権DD実施を後押し。他方、中小企業では「人権に対する内容の理解」が課題に。
脱炭素化(温室効果ガスの排出削減)に関し「すでに取り組みを行っている」企業は4割超。前年比1割近く増加。グリーン調達(調達先へ脱炭素化要請)を行う企業も2倍超に。サプライチェーン全体で削減意識が急速に浸透する中、未対応で取引機会が制限されるリスクも。

ジェトロ海外調査部(担当:伊藤、森)
Tel:03-3582-5177