英政府、現代奴隷法年次声明の登録制度を更新、対象団体に通知
(英国)
ロンドン発
2024年05月10日
英国政府は4月26日、「2015年現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)」に係る年次声明のオンラインレジストリ制度を更新した。政府から営利団体・企業に通知をすることで、対象団体にタイムリーな声明のアップロードを促し、信頼性の高い声明の公表をサポートする。通知の内容は次のとおり。
- 2021年のオンラインレジストリ立ち上げ以降、声明を更新していない営利団体・企業へのメールによる通知(1回限り)
- 登録団体・企業へ最新の年次声明の登録を求めるメールによる年1度の通知
- 登録期限1カ月前、2週間前、1週間前のメールによる通知
また、オンラインレジストリの検索・概要ページを刷新した。これにより、団体・企業が6つの推奨開示項目(注)のうち幾つを公表しているかが明らかとなり、検索者がより多くの情報に基づいた意思決定を行い、企業のサプライチェーンでの奴隷労働・人身取引を排除する取り組みを確認できるとしている。
政府は、現代奴隷法年次声明の公表は、透明性を高めるとともに、消費者が情報に基づく選択を行えるようにすることで、英国のサプライチェーンでの強制労働のリスク軽減に資するとしている。
現代奴隷の特質と複雑な世界規模のサプライチェーンは、どのような部門・業種でもリスクを受けない可能性は低いことを意味し、どのようなビジネスでも奴隷制と無関係と主張しないでほしいとしている。
現代奴隷法は2015年3月、人身取引や奴隷制に関する犯罪体系を統合し、現代奴隷労働や人身取引に関する法的執行力の強化を目的に制定、同年7月に施行された。同年10月からはサプライチェーンの奴隷制排除のため、年間売上高が一定規模を超える営利団体・企業に対し、年次声明の公表を義務付けている(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)。
(注)年次声明の推奨開示項目は次のとおり。
- 組織構造、事業、サプライチェーン
- 奴隷・人身取引に関するポリシー
- 事業・サプライチェーンで奴隷・人身取引が発生するリスクがある部分と、当該リスクを評価、管理する手段
- 事業・サプライチェーンでの奴隷・人身取引に関するデューディリジェンスのプロセス
- 従業員が利用可能な奴隷・人身取引に関する訓練や能力開発
- 事業・サプライチェーンでの奴隷・人身取引に関する組織の長期的な取り組みと進捗を評価するための目標と重要業績評価指標(KPI)
(野崎麻由美)
(英国)
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