アップルサプライヤーのベトナム拠点が35社に大幅増、世界4位に

(ベトナム)

ハノイ発

2024年05月13日

米国アップルが2024年4月に公開した2023年度サプライヤーリストによると、ベトナムに生産拠点をもつ同社サプライヤーの数は35社だった。中国(156社)、台湾(49社)、日本(42社)に次ぐ世界4位で、韓国(33社)や米国(26社)よりも多い(添付資料表1参照)。前年度からの増減では、ベトナムは国・地域別で最も多い10社増加した。また、ベトナムは2018年度に14社の掲載だったため、5年間でサプライヤーが2.5倍に増えたことになる。

2023年度サプライヤーリストでは、2社のベトナム拠点が非掲載となった一方、新たに12社が掲載された(添付資料表2参照)。12社の本社所在地の内訳は中国6社、台湾4社、米国とシンガポールがそれぞれ1社となるが、12社全てが中国に生産拠点を有し、その中国拠点も同リストに掲載されている。このうち10社のベトナム拠点は、中国国境に近いベトナム北部に集中する。労働者の賃金が中国と比べて比較的安価なことなどに加え、中国との物流効率の良さがベトナムを新たな拠点に選ぶ背景にありそうだ。

4月15~16日にはアップルCEO(最高経営責任)のティム・クック氏が訪越し、ファム・ミン・チン首相と会談した(2024年5月1日記事参照)。クック氏は、2019年以降にアップルがサプライヤーを通じてベトナムに支出した額は160億ドルに及ぶと話し、今後のベトナムへの投資拡大方針やベトナムのイノベーション支援の意向を表明するなど、同国への関与を強める姿勢を示している。

アップル製品の全生産のうち、2025年までにiPadとApple Watchの20%、MacBookの5%、AirPodsの65%がベトナムで生産される、というアナリストの予測もある(ベトナムインベストメントレビュー4月24日)。ベトナム政府も、アップル製品サプライヤーの国内進出を歓迎し、さらなる投資などを要請している。しかし、経済成長と相次ぐ大型投資により電力需要が増加するベトナムは、電力供給の安定化と再生可能エネルギー(再エネ)開発の両立に苦慮している(2023年12月5日付地域・分析レポート参照)。アップルがサプライヤーに求める再エネ由来の電力を使用した製造の実現には、依然多くの課題が残る。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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