ロンドンで「アースフェスト」開催、AIや循環型経済などを議論

(英国)

ロンドン発

2024年05月02日

英国・ロンドンで41821日、「アースフェスト(EARTHFEST)」が開催された。419日を「トレードデー」とし、サステナビリティに取り組む企業を集めセミナーやネットワーキングが行われた。2021日の「ゼネラルデー」では一般の来場者を迎え、環境意識向上のため、芸術イベントやワークショップが無料で開催された。

419日に行われた環境問題解決に人工知能(AI)を活用するグリーンAIのパネルディスカッションで、グーグル担当者は、2030年までにAIを活用することで温室効果ガス排出量を510%削減でき、エネルギー、素材、モビリティは特に注力すべき分野とした。同分野のスタートアップ、マップモルタルの担当者も登壇。脱炭素化に向けAIを活用した建物の改修計画をより正確かつ低コスト化するプラットフォームを提供、AIの活用で多くの時間を削減できるとした。同社は、ロンドン北部バーネットで自治体と協力し約15万の建物改修を行うプロジェクトに取り組んでおり、政府系研究資金助成機関イノベートUKのネットゼロ・リビング・プログラムによる補助金も獲得している。

循環型経済の実現がテーマのパネルディスカッションでは、廃棄削減が強調された。家庭における不要品の販売・譲渡支援のプラットフォーム「Olio」を開発したテサ・クラーク氏は、循環型経済の実現には消費者意識を変えることが重要で、サステナビリティによるメリットを消費者に周知する必要があると指摘。サステナビリティは複雑なものだと認識されがちだが、「モノをリユースする」という簡単なことでよいと主張し、リユースはリサイクルよりも環境にとって重要だと述べた。

写真 循環型経済の実現をテーマにしたパネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

循環型経済の実現をテーマにしたパネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

ネットゼロ移行に向けた資金調達に関するパネルディスカッションでは、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)のセラ・ケミット氏が、ネットゼロ移行には公的資金だけは不十分で、民間資金の投入も不可欠と指摘。ESG(環境・社会・カバナンス)情報プロバイダー・アラベスクのカロリーナ・パルエロ氏は、ポートフォリオ管理の分野でのAIの可能性を強調した。アラベスクAIは、複雑でコストのかかる顧客の既存の財務および非財務情報ポートフォリオを診断し、3万社超の企業データやディープラーニングなどを活用し、顧客の嗜好(しこう)を投資に反映させるプロセスを自動化している。ディスカッションの締めくくりには、今後の課題として、環境への次世代の意識を高めることが強調された。

(チャウジュリー・クリシュナ)

(英国)

ビジネス短信 5f75ce965c0a51f2