英国、不法移民抑制に向けた法案成立により移送計画を実行へ

(英国、ルワンダ)

ロンドン発

2024年05月02日

英国政府は4月23日、不法入国者の抑制に向け「ルワンダの安全法案」が議会で可決されたと発表し、4月25日には同法案が裁可されたことを発表した。これにより、2022年4月に発表された不法移民のルワンダへの移送計画の実行が可能となった(2022年4月26日記事参照)。英国政府は10~12週間後に最初の移送を行う予定とし、チャーター機の手配や人材の確保などの準備を進めている。その後も複数の便が予定されている。

本計画に対しては、発表当時から複数の慈善・運動団体のほか保守党内からも批判が出ていたほか、政府の移送に関する政策の適法性については裁判も行われていた。本政策については、ルワンダ当局によって英国から移送された人たちの難民申請が適切に処理されないリスク、つまり迫害の恐れがある国に送還される(ルフールマン)リスクがあるとして、控訴審、最高裁で違法とされていた。今回の法案は、最高裁の懸念を払拭するために、2023年12月にルワンダとの間で締結した条約に基づきルワンダを安全な国と確認して、議会に提出されていたもの。条約では、ルワンダに移送された人々がルフールマンのリスクにないことを確実にするほか、新機関を設置するなどして同国の難民制度を強化するとした。

このほか、法案では英国内の裁判所などの、ルワンダの一般的な安全性のみによる移送の遅延または阻止を防ぐことなども規定している。

野党・労働党のイベット・クーパー影の内務相は、X(旧Twitter)で本計画について「真剣な計画ではなく、不当な選挙戦術にすぎない」と強く批判している。一方で、同氏は労働党の対策として国境警備の強化を掲げている。国連の難民高等弁務官や人権高等弁務官も23日、英国政府に国際協力と国際人権法の尊重に基づき計画の再検討を求めた。

(チャウジュリー・クリシュナ)

(英国、ルワンダ)

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