欧州投資銀行と欧州特許庁、クリーンテック産業拡大に向け提言

(EU)

ブリュッセル発

2024年05月10日

欧州投資銀行(EIB)と欧州特許庁(EPO)は4月26日、EUのクリーンテック産業の中心的プレーヤーである新規特許技術を商業化している企業に焦点を当て、世界のクリーンテック産業の中でのEU企業の位置づけと課題を分析した報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

EUは世界のクリーンテック関連特許(2017~2021年)の22.0%を占め、特にドイツとフランスの貢献が大きい。EU域外国・地域では、日本(21.1%)、米国(20.2%)、中国(15.6%)の割合が大きく、特に中国はここ数年で急成長を遂げている。

1997年以降、世界のクリーンテック関連の特許出願は、複数国での特許出願(IPF)ベースで累計75万件を超え、IPF全体の約12%を占めている。低炭素エネルギー技術に関する特許が最も多く、クリーンモビリティー、代替プラスチック、気候変動への対応技術、クリーン製造業と続く。EUが強みを持つ分野は低炭素エネルギー技術、クリーンモビリティー、代替プラスチックだ。

クリーンテックに対する市場ニーズは高まっているが、EUと米国の間には大きな資金格差があり、EU企業の成長を制限していることもわかった。EU企業は全ての成長段階で米国企業ほど多額の資金調達ができず、負債による調達に依存する傾向が強い。EU企業の30%以上で資金不足がクリーンテックの商業化の障壁となっているという。

EUでクリーンテック関連特許を取得している企業の29%は現在、自国市場を優先しているが、61%はEU単一市場を将来の主要市場とみなしている。EUのクリーンテック企業が単一市場の規模の優位性を得るには、さらなる単一市場の統合と規制の明確化が必要と報告書は指摘した。また、特許を活用することにより技術優位性を確保できると強調。特に小規模企業にとっては、新技術の商業化、パートナーシップの構築、資金を集めるための重要な資産になると分析した。

(大中登紀子)

(EU)

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