中国米国商会、2024年白書で米中両国に相互理解に向けた対話促進を求める

(中国、米国)

北京発

2024年05月09日

在中国米国企業の団体の中国米国商会は4月23日、2024年版白書を発刊した。白書には在中国米国企業が直面する課題や米中両国政府に対する建議が盛り込まれている(注)。

白書で同商会は、中国で事業を展開する外国企業は2023年、新型コロナウイルス感染症防疫措置の終了と米中間の各種のハイレベル対話の再開により、今後の事業環境等について慎重ながらも楽観的な見方を示した一方で、「米中関係の緊張の高まり」を引き続き最大の懸念点として認識していると指摘した。また、中国政府が2023年8月と2024年3月に打ち出した外資誘致のための2つの「24項目の措置」(2023年8月15日記事2024年3月29日記事参照)などの取り組みについて、長期的な投資先としての中国の魅力を高めるものだと評価した。

白書では、2024年の同商会の取り組みと政策建議の重点として、次の3点を挙げた。

  1. 米中両国の持続的な相互理解に向けた両国間のハイレベルなコミュニケーションと対話の促進
  2. 企業が十分な情報に基づいて投資の意思決定を行えるような、明確で一貫性のある政策策定と確実な実施
  3. 外商投資企業の中国市場への関与を維持するための効率的かつ平等な市場アクセスの実現

1.では、経済固有の問題と国家安全保障上の問題を可能な限り区別するよう求め、輸出管理規制と投資管理は必要としつつも、その対象は限定されるべきと建議している。また、2024年に複数の2国間ハイレベルフォーラムを開催すべきとしている。

2.では、出資形態に関わらず、全ての企業を平等に扱うことや、補助金などの透明性向上の観点から、中国政府がビジネス志向の政策や規制改革を推進することを期待するとしている。さらに、中国の不透明で曖昧な政策策定と運用は企業のマインドを悪化させ、中長期的な投資で企業が十分な情報に基づいた意思決定を行う能力を損なっているとした。特に多国籍企業の運営について、データの越境には柔軟なアプローチが必要で、データセキュリティーと称した過剰な規制は効果的なデータ移転やグローバルな事業運営を妨げると指摘した。

3.では、外国企業の事業活動に対する偏った調査や、国際的に認められたデューディリジェンスプロセスへの干渉を減らし、経済的威圧の1つの形態として行われるセンシティブではない消費財に対する恣意的な輸入規制を停止することを通じて、外国企業の直接投資に対する約束を履行するよう求めた。

(注)中国米国商会による白書は今回で第26版目となる。2024年版白書は37章で構成しており、主な構成は次のとおり。農業、銀行、教育、食品・飲料、情報通信技術(ICT)、保険、ヘルスケアなど業界特有の問題に関する21の章。競争法、コンプライアンス、政府調達、税、訪中ビザなどの産業政策や市場アクセスに関する10の章。中国の中部、北東部、南西部、上海市、天津市といった地域に焦点を当てた5つの章。なお、白書では2024年2月に同商会が発表した「中国ビジネス環境調査レポート2024年版」(2024年3月6日付地域・分析レポート参照)に基づいた分析が行われている。

(亀山達也)

(中国、米国)

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