米主要メディア、大統領選挙本選ではヘイリー氏支持票の行方に注目、スーパーチューズデー終え

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月07日

米国で3月5日、2024年大統領選挙に向けて16州と準州のサモアで予備選挙が行われた(2024年3月7日記事参照)。ニッキー・ヘイリー元国連大使が共和党の予備選挙からの撤退を表明したことから、共和党の大統領候補者は、事実上、ドナルド・トランプ前大統領に絞られた。民主党では、ジョー・バイデン大統領に対する主要な対抗馬はいない(注1)。3月5日のスーパーチューズデーを終え、米メディアの関心は、早くも11月の大統領選挙における両候補の対戦に移っている。

政治専門紙「ポリティコ」(3月6日)は、スーパーチューズデーの結果に対して、事前の予想とおりバイデン氏、トランプ氏の強さが示されたとしつつも、同時に、大統領選挙本選での両候補者の弱点が垣間見えたと評した。同紙は、トランプ氏が郊外の高学歴有権者に苦戦していると指摘し、共和党の世論調査員の「彼はどの州でも、最も教育水準の高い郡で一貫して敗北している」との分析結果を紹介した。バイデン氏に対しては、民主党の地盤であるミネソタ州で、「支持者なし」に20%近い票が投じられた点を指摘し、パレスチナ自治区ガザで攻撃を続けるイスラエルへの対応が非難されているとした。「ニーヨーク・タイムズ(NYT)」紙電子版(3月6日)も、バイデン氏がイスラエルを支持していることから、同氏の得票率は「(ミネソタ州)ミネアポリスのあるヘネピン郡では、3分の2以下の得票率だった」と報道するなど、複数メディアがこの点を指摘している。

撤退したヘイリー氏の支持者の票の行方にも、注目が集まっている。ヘイリー氏は共和党の中でも中道派であり、同氏の支持者が、保守強硬派のトランプ氏の支持に回るのかが大統領選挙の結果を左右する1つの争点とされている(注2)。CNN(3月6日)は、ヘイリー氏が好調だったのは、都市部、学園都市、郊外だったとし、特にトランプ氏にとって、郊外が問題となる可能性があると指摘した。これらの地域の大学教育を受けた有権者は、2016年にトランプ氏が共和党の旗手として台頭して以来、民主党支持に大きくシフトしているという。CNNは出口調査の結果として、大卒有権者の人口が急増しているスイング・ステート(注3)であるノースカロライナ州では、ヘイリー氏を支持した有権者の81%が11月の本選ではトランプ氏に投票しないと答えた、と紹介している(注4)。NYT(3月6日)も、ノースカロライナ州の共和党予備選挙の投票者の約4人に1人が、トランプ氏が指名を獲得した場合、不満を感じると答えている、との結果を紹介している。

一方で、保守系メディアのFOX(3月6日)は、ヘイリー氏の撤退表明直後に、同氏を支持していたラルフ・ノーマン下院議員(共和党、サウスカロライナ州)のインタビューを放送し、同氏による、ヘイリー氏が将来的にトランプ氏を支持するだろうとの見通しを伝えた。ヘイリー氏は、3月6日の撤退表明の際には、トランプ氏への支持を直接的に表明していない。

ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。

(注1)スーパーチューズデー後、ディーン・フィリップス下院議員(ミネソタ州)が、民主党の予備選選挙からの撤退とバイデン大統領への支持を表明した。

(注2)3月1~3日までに首都ワシントンで行われた共和党予備選挙において、ヘイリー氏に投票したという男性は、ジェトロの取材に対して「米国を中道的な国に戻したい。両極端ではなく、若くて新しいアイデアのある国にしたい」などと、その理由を語っている(2024年3月5日記事参照)。

(注3)勝利政党の変動しやすい激戦州を、振り子のように揺れるさまから「スイングステート」という。大統領選挙の選挙人過半数の270票を獲得するには、伝統的な地盤を有する州の票に、スイングステートの票をいかに積み重ねるかが鍵となる。ジェトロの2024年米国大統領選挙特集ページPDFファイル(642KB)を参照。

(注4)CNNによると、ノースカロライナ州では、開票率97%時点で、トランプ氏への支持が73.8%、ヘイリー氏が23.3%で、トランプ氏の勝利が確実とされている。

(赤平大寿)

(米国)

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