EU首脳、ウクライナとのEU加盟交渉開始に合意も、追加支援策の承認は持ち越し

(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、西バルカン諸国)

ブリュッセル発

2023年12月21日

欧州理事会(EU首脳会議)が12月14~15日にブリュッセルで開催され、ウクライナ支援や、中東情勢、EU拡大・改革、多年度財政枠組み(MFF)、安全保障・防衛、移民政策などに関する総括を採択した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

EU拡大に関し、欧州委員会が11月に勧告したウクライナとの正式な加盟交渉の開始(2023年11月10日記事参照)は欧州理事会で承認された。モルドバの加盟交渉の開始と、保留となっていたジョージアの加盟候補国の認定も承認された。ボスニア・ヘルツェゴビナの加盟交渉の開始に関しては、欧州委から2024年3月までに加盟基準の順守状況の報告を受けて決定するとした。このほかの加盟交渉に関して、北マケドニアに対しては法改正への取り組み、西バルカン諸国に対してはEUのルールと基準に基づいた改革への取り組みをそれぞれ加速するよう呼びかけた。

会談後の記者会見で、欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は、加盟国拡大は平和、安全保障、繁栄への投資であり、この決断はEUや加盟候補国の市民、世界に対する強い政治的メッセージだとした。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も、EUとしての有言実行の姿勢を示し、民主主義への大きな投資だとした。一方、現地報道によると、ウクライナとの加盟交渉開始に反対していたハンガリーのオルバーン・ビクトル首相は採決の際、一時退席するかたちで「棄権」し、その他の加盟国による「全会一致」での合意だった。

ウクライナ追加支援策を含むMFF修正案は合意できず

欧州委が6月20日に発表したEUの2021~2027年中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)の修正案(2023年6月27日記事参照)に関しては、ハンガリーを除くEU加盟26カ国が支持した。フォン・デア・ライエン委員長は、MFF策定時には想定されていなかった複数の危機への対応には追加予算と予算の組み替えが必要で、合計646億ユーロに上る新たな優先事項に関し、26カ国の支持を得したとした。第1の優先はウクライナへの継続的支援(500億ユーロ。うち補助金170億ユーロ、融資330億ユーロ)。次いで、移民対策・難民支援(96億ユーロ。うち移民・国境対策20億ユーロ、難民支援など76億ユーロ)。域内産業の競争力を強化するための「欧州戦略技術プラットフォーム(STEP)」の下での欧州防衛基金(15億ユーロ)、特別財源(20億ユーロ)、連帯・緊急援助準備金(SEAR)(15億ユーロ)が続いた。ミシェル常任議長は、2024年初めに特別欧州理事会を開催し、全会一致での合意を目指すとした。

このほか、前回10月の欧州理事会(2023年10月30日記事参照)で明記したロシアへの追加の経済制裁に関しては、第12弾パッケージを採択することを支持した。中東情勢については、パレスチナ自治区ガザ地区への人道的支援を最優先すると確認したものの、新たな声明の発表には至らなかった。現地報道によると、アイルランド、ベルギー、スペイン、スロベニアは人道的停戦の必要性を訴えたものの、加盟国内で意見はまとまらず、先の声明を維持するかたちとなった。

(薮中愛子)

(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、西バルカン諸国)

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