一部で改善も、依然低迷する在ロシア日系企業の景況感

(ロシア)

調査部欧州課

2023年11月30日

ジェトロがロシア進出日系企業を対象に10~11月に実施したアンケート調査によると、日系企業の景況感は5回連続でマイナスとなった(添付資料図1参照)。西側諸国による対ロ経済制裁緩和の兆しはなく、企業が動きにくい状況が続いている。

自社の景況DI(注)は、軍事侵攻をきっかけにリーマン・ショック後並みに落ち込んだ2022年5月を底に回復傾向にはあるが、マイナス50付近のまま。一部に企業からは、消費者需要の拡大(2023年11月27日記事参照)や、競合他社のロシアからの撤退を背景に、ビジネス環境が改善したとの指摘もあった。

製品・サービスの自社販売価格DIは大幅上昇(前回比17ポイント増)、製品在庫DIは50で横ばい、資金繰りDIは若干の上昇(同4ポイント増)となった(添付資料図2参照)。

縮小・休眠の「維持」の傾向が強まる、事態の長期化を覚悟

今後半年~1年後の事業展開見通しを聞いたところ、「維持」の割合が上昇した。前回調査(2023年5~6月実施)の時に比べて各社の「縮小」や「休眠化」のプロセスがある程度進展したことを受けて、「(縮小後の新体制あるいは休眠状態の)維持」の傾向が強まったとみられる。

中国企業の台頭により、「サービスコストの上昇」「価格競争が激化している」「日系企業のシェアが奪われている」といったマイナス面の指摘が出る一方で、ビジネスターゲットとしての中国企業が増えることによって「販売増が見込まれる」との声もあった。

本アンケート調査では、個別トピックとして、ウクライナ情勢の影響についても設問を設けた。全体的には、「ロシアに対する本社の厳しい見方は変わらない」「ロシアビジネスを再開できるようになるまでには相当の時間を要する」「アフターサービス終了のめどがつき次第、休眠化を進める」といったネガティブなコメントが目立った。先行きが不透明な中で、事態の長期化を覚悟している様子がうかがえた。

本調査は10月25日~11月1日の期間で、モスクワ・ジャパンクラブの加盟企業と一部の在サンクトペテルブルク日系企業155社を対象に実施。79社から有効回答を得た(有効回答率51.0%)。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。景況DIは、「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした比率を引いた数値。製品・サービスの自社販売価格DIは、「上昇」から「下降」の比率を引いた数値、製品在庫DIは、「不足」から「過大」の比率を引いた数値、資金繰りDIは、「改善」から「悪化」の比率を引いた数値。

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