2023/2024年度に入り、経常収支は黒字化

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年10月26日

バングラデシュ中央銀行は、10月18日に公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した「主要経済指標(9月版)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」において、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の7~8月の経常収支を11億800万ドルの黒字と発表した(添付資料表参照)。同国ではこれまで、輸入超過により貿易収支、および経常収支は赤字構造となっていたところ、輸出の拡大(2023年10月17日記事参照)と輸入抑制(前年同期比22.3%減)による貿易赤字の改善が奏功した。ただ、「その他投資(ネット値、注1)」をはじめとする金融収支の赤字増加により経常黒字は大きく相殺され、経常収支は黒字化されたものの国際収支全体は赤字となり、前年同期と比較し5億2,300万ドル赤字が減少したにとどまった。

なお、経常収支の中の所得収支にある、郷里送金が減少傾向にあることを受け、同送金に適用される対ドル為替レートの上限(2023年10月11日記事参照)は1ドル=115.5タカまで引き上げられた、と報じられている(「フィナンシャル・エキスプレス」紙10月22日)。政府は正規ルートによる送金を促進するため、現金インセンティブ付与の継続(注2)、モバイル金融サービス(MFS)やインターネットバンキングの促進、従来は5,000ドルを超える送金時に必要だった証拠書類の提出制度の撤廃や、2 万ドル相当額を上限としたForm Cによる申告制度の廃止による手続きの簡素化が継続されている。

そのような状況の中で、MFSの主要プラットフォームの1つであるノゴド(Nagad)は、5,000タカ(約6,900円、1タカ=約1.37円)を超える送金の受取人に対し、バイク、スマートTV、スマートフォン、ゴールドバーのいずれかの抽選に応募できるギフトキャンペーン(12月31日まで)を行うなど、正規ルートでの送金促進が図られている。

また、政府および商業銀行の外貨繰りの課題、輸入の抑制により、信用状(L/C)の開設および決済遅延が日系企業にとっても依然懸案となっている中、今回の発表によると、現行の2023/2024年度の7~9月間における産業用の原材料輸入向けL/Cの開設額、決済額はそれぞれ前年同期比22.6%減、36.6%減となり、また食品を中心とする消費財輸入のL/C開設額は品目別で最大の減少幅(47.8%減)となったとされる。

(注1)「直接投資」「ポートフォリオ投資(株式市場、債券市場への対内証券投資)」「金融派生商品」「外貨準備」のいずれにも該当しない金融取引が全て計上される。政府借款(政府の行なう国際的な長期資金の貸借)、銀行や企業による政府への貸付・借入金、預金の受け払い、貿易信用などが含まれる。

(注2)海外出稼ぎ労働者による正規ルートでの郷里送金を促進するため、政府が送金額の2.5%相当の現金を送金の受取人に付与するもの(2022年1月5日記事参照)。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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