モスクワで日欧企業が活動の現状で意見交換

(ロシア、日本、欧州)

調査部欧州課

2023年10月04日

モスクワで9月22日、ロシア進出日系企業の商工会組織モスクワ・ジャパンクラブと、欧州ビジネス協会(AEB)が共同で、ロシアで活動する日欧企業の活動の現状と課題に関する意見交換会を開催した。ジャパンクラブとAEBはこれまで、通関・物流分野での意見交換と相互の経験の共有を重ねてきたが(2022年2月1日記事参照)、今回はそれを拡大するかたちでの開催となった。

AEBのタッジオ・シリング会長は、6月9日に発表した在ロシア欧州企業を中心とするAEB会員向けの景況感調査(2023年6月27日記事参照)の結果を紹介し、「欧州企業のロシア市場に対する景況感は回復しつつある」と説明した。在ロ欧州企業の景況感指数(AEB-GfK Index)は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、2022年6月調査時点で2010年の調査開始以来最低の80まで下落した一方で、2023年(6月調査)は116まで回復した(添付資料図1参照)。AEBでは指数が120以上で「好調」、80以下で「不調」としている。

シリング会長は「2022年(の景況感)は、2021年の新型コロナウイルス感染症拡大から市場回復への期待がウクライナ侵攻で一気に縮小した」と指摘し、2023年の回復はその反動との見方を示した。具体的には、a.2022年から大きな状況の変化がなく、企業は「新しい状況」に適応したこと、b.2022年から2023年にかけて、ロシア市場は安定的に推移したことなどが背景にあるという。ロシア市場の将来性への見方も回復している。短期(今後1~2年)では縮小を見込む企業が多いが、中期(3~5年)、長期(6~10年)では「成長」がいずれも2022年を10ポイント以上、上回った(添付資料図2参照)。

その一方で、ロシア進出の外国企業全般を取り巻く環境は厳しくなるとの指摘もあった。他の登壇者からは、a.事実上の接収を含むロシア政府によるロシア国内の外国企業資産管理強化(2023年5月8日記事、2023年7月25日記事参照)、b.外国企業の事業売却利益や配当などの送金の困難(2023年7月21日記事参照)、c.租税条約の効力停止や超過利潤税(2023年8月15日記事参照)など税制関連の規定変更が今後のロシアでの外国企業活動の制約要因になるとの指摘があった。

日本企業の活動状況に関しては、ジェトロが6月に発表した直近の景況感調査(2023年7月3日記事参照)に基づき、欧州企業とは対照的に先行きを不安視する見方が強いと報告した。シームレス法律事務所のゲオルギー・ダネリヤ・カウンシルは企業の相談実績を基に、「欧米企業は撤退完了、今後の撤退予定が合わせて25%程度に上るのに対し、日本企業は10%程度」と、日系企業が比較的多くロシアに残留する傾向が見て取れると指摘した。ジャパンクラブの岡田邦生事務局長も同様の見方だ。「2022年2月時点と現在を比較すると、名簿上の日本人駐在員数は470人から270人程度まで減少したが、ジャパンクラブ会員企業数は180社から150社と大きくは減少していない」とし、日本企業は規模を縮小しつつも、市場にはとどまり、状況を注視しているとの見方を示した。

(欧州課)

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