石炭・石油・天然ガス需要は2030年までをピークに減少、IEA見通し

(世界)

調査部国際経済課

2023年10月26日

国際エネルギー機関(IEA)は10月24日、2023年版の「世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook)を発表した(IEAプレスリリース10月24日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同報告書は、既に公表や実施がされている政策に限定して推計したSTEPSシナリオ(Stated Policies Scenario)で、石炭、石油、天然ガスのそれぞれの世界需要が2030年までにピークを迎えるとの分析を示した。世界のエネルギー供給に占める化石燃料(石炭、石油、天然ガスの合計)の割合は、ここ数十年は80%程度で推移してきたが、2030年までに73%に減少する予測。

IEAは2022年の見通しからの大きな変化として、電気自動車(EV)販売台数の成長と、再生可能エネルギー普及の勢いが継続していることを挙げ、2030年にはクリーンエネルギー技術がより重要な役割を果たすとした。具体的には、2030年にはEVが新車販売台数の半分を占めることや、世界の電力構成に占める再生可能エネルギーの割合が現在の30%から50%に上昇すること、ヒートポンプなどの電気暖房システムの売り上げが化石燃料のボイラーを上回ること、新規の洋上風力発電への投資額が新規の石炭火力発電所やガス火力発電所への投資額の3倍となることなどを挙げた。

エネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量は、2025年までにピークに達するという見通しも発表した。しかし、IEAによると、現在のSTEPSシナリオでは世界のCO2排出量は高水準にとどまり、2100年の世界の平均気温は産業革命以前に比べて約2.4度押し上げると予測しており、パリ協定の1.5度目標を上回ると指摘した。

今回の報告書では、1.5度目標達成の軌道に乗せるための2030年までの世界戦略として、以下の5つの柱を提言している。(1)世界の再生可能エネルギーの設備容量を3倍に、(2)エネルギー効率の改善率を2倍に当たる年率4%に、(3)化石燃料によるメタン排出量の75%削減、(4)新興国・途上国のクリーンエネルギーに対する投資を3倍にするための革新的で大規模な資金調達メカニズムの整備、(5)化石燃料の段階的削減のための措置を講じること(石炭火力発電所の新規承認の停止を含む)。また、IEAはこの戦略について、11月30日から12月12日にかけてアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催予定の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)の成功の基礎にもなるとしている。

(板谷幸歩)

(世界)

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