イスラエル中銀、政策金利を据え置き、2023年のGDP成長予測を2.3%へ下方修正

(イスラエル、パレスチナ)

テルアビブ発

2023年10月25日

イスラエル中央銀行は10月23日に金融委員会会合を開催し、為替と金融市場の安定を確保するために政策金利を4.75%に据え置くことを決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。据え置きは7月(2023年7月13日記事参照)と9月(2023年9月14日記事参照)に続いて3会合連続となる。

イスラエルは10月7日のパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによる攻撃により「戦争状態にある」とし(2023年10月10日記事参照)、金融委員会は「この戦争は経済活動にも金融市場にもさまざまな影響を及ぼしている」と説明した。イスラエルの通貨シェケルは2023年初からの下落に加え、ハマスとの軍事衝突によって続落し、前回9月の金融政策決定以降、シェケルは対米ドルで6.3%、対ユーロで4.0%、名目実効為替レートで4.8%下落したとしている。中銀は軍事衝突の影響を考慮し、政策金利の据え置きとともに、300億ドルを上限とする外国通貨売却プログラムと、150億ドルを上限とする外国為替市場でのスワップ取引プログラムを発表した。

中銀調査部は、軍事衝突開始以降に収集した情報に基づき、マクロ経済見通しを下方修正した。軍事衝突が2023年第4四半期(10~12月)にイスラエル南部に集中するという前提の下、GDP成長率見通しは2023年が2.3%、2024年は2.8%と、7月の予想から0.7ポイント、0.2ポイントそれぞれ下方修正した。また、経済活動への影響は政府の財政赤字の増加につながり、財政赤字額は2023年にはGDP比2.3%、2024年には同3.5%に達するとして、2024年末の債務残高対GDP比は65%になるとみている。

9月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%低下した。前年同月比では3.8%と、目標レンジの上限を上回っている。中銀の評価によると、今後4四半期(2024年第3四半期まで)のインフレ率は2.9%で、政策金利は4~4.25%に低下すると予想している。

世界的には、イスラエルの治安情勢が中東の地政学的緊張の高まりにつながったが、石油・天然ガス価格への影響はあるものの、世界の金融市場への影響はこれまでのところ緩やかとしている。

次回の政策金利決定は11月27日に予定されている。

(アンナ・ジュコブ、中溝丘)

(イスラエル、パレスチナ)

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