EU首脳、域内産業の競争力強化の必要性を確認

(EU)

ブリュッセル発

2023年10月30日

EUは10月26~27日、欧州理事会(EU首脳会議)をブリュッセルで開催し、ウクライナ支援、中東情勢、多年度財政枠組み(MFF)、経済、移民政策などに関する総括外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

中東情勢について、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの衝突に関するEUの立場を総括に明記した。ハマスのテロ攻撃に対する最大級の非難、国際法・国際人道法に則したイスラエルの自衛権行使の容認、人質の即時解放を求める10月15日付の欧州理事会の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにあらためて言及。加えて、ガザの人道状況は悪化しており、人道支援活動のためのアクセス確保、一時的な休止に加え、「二国家解決」に向けた国際和平会議の早期開催に対する支援も追記した。現地報道によると、加盟国間での意見の相違もあり、停戦ではなく、最終的に「休止」の表現にとどまったという。

ロシアのウクライナ侵攻に関しては、EU法と国際法にのっとり、EU内で凍結されているロシア資産から生じる利益をウクライナの復興支援に向ける具体策の提案や新たな経済制裁の検討に関しても明記した。

産業別の対話通じ、EU域内産業の競争力強化

地政学的なリスクや国際競争が激化する中で、EU経済の繁栄の基礎となっている単一市場が機能するために、長期的な競争力の必要性を明記した。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は欧州理事会後の記者会見で、競争力強化には人材不足への対応や、各規制の整備、安定したエネルギー価格の実現、投資の促進が重要だと確認したと述べた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、競争力強化には産業・エネルギー政策の実行が必要で、重要原材料法案(2023年3月22日記事参照)や、ネットゼロ産業法案(2023年3月20日記事参照)、電力市場改革法案(2023年10月20日記事参照)、欧州戦略技術プラットフォーム(STEP)(2023年6月27日記事参照)の早期合意の必要性を述べた。加えて、EU域内企業の公平な競争環境づくりには、米国のインフレ削減法(IRA)の影響は現在、限定的なものの、産業別に及ぼす影響は注視する必要があるとした。

特にグリーン・ディール産業計画の枠組みが完成し、実施段階に向けて必要となるガイドラインの策定には、産業界の意見を聞く重要性を強調。このため「クリーンテック・ダイアログ」を通じ、産業ごとにヒアリングを行い、支援が必要な箇所を特定していくとした。膨大な作業となるものの、中国の補助金問題もあり、公平な競争環境の維持のために必要な作業とした。また、財政健全化への取り組みと経済成長に向けた投資や改革の推進の両立を目指す財政規律改革法案(2023年5月2日記事参照)の早期成立にも言及した。

このほか、欧州委が6月20日に発表したEUの2021~2027年中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)の修正案(2023年6月27日記事参照)は2023年内に合意を目指すことを記載した。

(薮中愛子)

(EU)

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