中国EU商会が提言書を発表、景気回復に向けた取り組みを要望

(中国、EU)

北京発

2023年09月27日

在中欧州企業の団体である中国EU商会は9月20日、中国政府へのビジネス環境改善などの要望をまとめた提言書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。提言書は1,700社超の会員企業の意見を集約(注1)したもので、1,058項目の提言を掲載している。

提言書冒頭の概要では、中国および世界の経済の先行き不安や地政学的緊張の高まりにより、欧州企業の中国ビジネスがより困難になっていると指摘した。また、中国の自立自強の方針に基づく産業政策や市場参入障壁が欧州企業に大きな影響を与えているとし、多くの企業がサプライチェーン、データ、情報技術システムおよび人員配置において、中国ビジネス用にシステムを構築するなどの対応を迫られているとした。

また、中国経済の減速が進出欧州企業にとっての最大の挑戦だとし、景気を回復させるため、中国政府に対して(1)市場の役割をさらに発揮させることによる生産性の向上、(2)ビジネスの脱政治化、法律・法規の曖昧さ回避、企業にとってのリスクの低減、(3)交流のチャンネルの増加、政策決定プロセスの最適化、(4)消費の促進、(5)経済回復と低炭素化への転換の両立、といった5つの面から対策を講じるよう提言している。

(1)では、国有企業の優先的な地位が企業間競争を阻害し生産性を損なっていると指摘したうえで、市場参入や監督管理の問題を解決し民営企業の信頼を再構築すること、「競争中立性」の実現に向け国有企業改革を継続して推進すること、中国企業・外国企業にとって真に公平な競争環境の整備に向けた法律・法規を策定すること、中国と世界経済の融合を強化し、自立自強や自給自足の過度な追求を回避することなどを建議した。

(2)では、ビジネスの政治化や曖昧な法律法規(注2)の実施がコンプライアンスリスクを高めていると指摘したうえで、他国の政府部門やステークホルダーと意見交換すること、法律法規の内容を明確にし、監督管理の予見可能性と確実性を高めること、一貫した、透明性および予見可能性の高い行政の規制運用を確保することなどを提言した。

(3)では、専門家などによるビジネス環境改善に向けた建議、外国企業による経済や政策に関する重要な情報へのアクセスが難しくなっていることを指摘し、政策の制定・改正を行う際にシンクタンクやステークホルダーからの意見を参考にすること、企業の投資決定に必要な合法的データおよびビジネス情報へのアクセスを許可することなどを提言した。

(注1)中国EU商会は各問題や業界ごとにワーキンググループを組成し、そこで意見集約したものを提言書に記載している。今回の提言書では、コンプライアンス・企業倫理、環境、財務・税務、人的資源、知的財産権、中小企業、投資、法律・競争、研究開発、標準・合格評定の10項目の業種横断的な課題のほか、各業界の課題と提言について記載している。

(注2)改正された「反スパイ法」と2023年7月に施行された「対外関係法」では、「国家安全」という広義の概念に触れたが、国家機密については明確に説明されていないとした。

(張敏)

(中国、EU)

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