再エネ支援スキームCfD第5回オークションの結果公表、洋上風力は応札なし

(英国)

ロンドン発

2023年09月15日

英国政府は98日、再生可能エネルギー支援スキームの差額決済契約(Contracts for DifferenceCfD)制度(注1)による5回オークションの結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。太陽光や陸上風力など95のプロジェクトで合計3.7ギガワット(GW)が約定した。予算の追加措置を経て、計22,700万ポンド(約4176,800万円、1ポンド=約184円)が割り当てられていた(注2)。前回の第4回オークションでは約11GWが約定しており、大幅な減少となった(2022712日記事参照)。

太陽光が約1.9GW、陸上風力で約1.5GWがそれぞれ約定した。また、新しい技術として潮流発電が約53メガワット(MW)、地熱発電が約12MWだった。前回のオークションでは洋上風力が約7GWだったが、今回は浮体式含めて応札なしという結果となった(政府発表における結果一覧PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

洋上風力が今回応札なしとなった背景について、政府は世界的なインフレとサプライチェーンへの影響が原因とした。この影響は既に企業動向にも表れている。スウェーデンの総合エネルギー企業バッテンフォールは720日、イングランド東部のノーフォーク・ボレアス洋上風力発電所について、最終投資決定を現時点で行わないことを発表した。ノーフォーク・ボレアスはCfD4回オークションで既に約定していたプロジェクト。バッテンフォールの説明によると、インフレ率の高騰と資本コストの上昇により、洋上風力を取り巻くサプライチェーンが悪化。この状況が事業の収益性に影響するため、同プロジェクトについて減損計上することになったとしている。

再生可能エネルギーの業界団体のリニューアブルUKは、洋上風力の応札なしという結果に対し、洋上風力市場に対する投資家の信頼を再構築するために緊急の行動を取るよう政府に求めると発表。また、エネルギー事業者の業界団体エナジーUKも「政府による2030年目標(注3)を危険にさらす」とした上で、「次期秋季予算で米国やEUなどとのクリーンエネルギーを巡る世界的な競争の激化にしっかりと対応できるようにする必要がある」と述べ、次回オークションを含めた政府による開発支援対策を求めた。次回の第6回オークションは20243月の入札開始予定で現在準備が進められている。

(注1)発電事業者の再生可能エネルギーへの投資リスクを減らすため、運転開始から15年間、対象となる電源の固定価格と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。事業者はオークションで技術ごとに自社の固定価格と設備容量を提示し競う(2021年5月20日付調査レポートの21ページ以降参照)。

(注2)当初2500万ポンドが設定されていたが、202383日に政府が2,200万ポンドの予算追加を発表(202345日記事202384日記事参照)。

(注3)英国政府は20224月発表のエネルギー安全保障戦略で、2030年までに洋上風力発電を最大50GW(うち浮体式は最大5GW)導入するという目標を掲げている。

(菅野真)

(英国)

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