第2四半期GDP成長率は横ばい、再び「欧州の病人」化の懸念広がる
(ドイツ)
ベルリン発
2023年09月08日
ドイツ連邦統計局は8月25日、2023年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(前期比、確定値、季節調整済み)を0.0%と発表した。2022年第4四半期(10~12月)から続いたマイナス成長から脱し、景気後退局面を回避した。前年同期比ではマイナス0.1%だった。
需要項目別の内訳をみると(添付資料表参照)、2四半期連続でマイナスだった個人消費支出は、食料品と娯楽・文化への支出が増加した一方で、交通・通信と宿泊・飲食サービスへの支出の減少で相殺され、前期比0.0%増と横ばいになった。政府消費支出は、0.1%増と増加に転じた。投資は、建設投資が0.2%増、機械設備投資も0.6%増と増加し、内需(0.6%増)の押し上げに貢献した。また、輸出は1.1%減、輸入は0.0%増の横ばいとなり、どちらも振るわなかった。加えて、外需(純輸出)はGDPの伸びを0.6ポイント押し下げた。
産業別でみると、情報通信が1.1%増、建設と不動産がそれぞれ0.2%増、製造業が0.1%増と増加した。一方で、金融・保険サービスが2.1%減、商業・運輸・宿泊・飲食は1.4%減と落ち込んだ。企業向けサービスは0.0%増の横ばいだった。
企業景況感も低下、再び「欧州の病人」となる懸念
ifo経済研究所は同日、8月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)を発表した。同指数は前月比1.7ポイント減の85.7で、4カ月連続で低下した。今後6カ月の見通しを示す期待指数も前月比1ポイント減の82.6と4カ月連続で減少しており、悲観的な見通しが広がっている。同研究所は「ドイツ経済はまだ危機を脱していない」と警戒感を示した。
また、IMFが7月25日に発表した「世界経済見通し(改定版)」(2023年7月26日記事参照)によると、2023年の実質GDP成長率予測(前年比)は、ドイツはマイナス0.3%と、調査対象の22カ国・地域の中で唯一マイナス成長の見通しだ。欧州では、ユーロ圏は0.9%、スペインは2.5%、イタリアは1.1%、フランスは0.8%とプラス成長を維持する見通し。
世界が経済成長を続ける中、ドイツは再び「欧州の病人」(注)になるのか、という報道が国内外で相次いでいる。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のベーター・アドリアン会頭は、経済対策を決定する閣議を控えた前日の8月28日に声明を発表。「ドイツは欧州最大の経済国だが、もはや欧州経済の牽引役ではなくブレーキだ」と評した。また、ドイツが抱える根本的な問題として、エネルギー価格の高騰、専門・熟練労働者不足の深刻化、インフラの不足を挙げた。経済の好転には、企業負担になっている複雑な行政手続きのスリム化に真剣に取り組むなどの行政改革が必要、との考えを示した。
(注)英国のエコノミスト誌は1999年6月3日の記事で、1990年の東西ドイツ統一後に国内経済の混乱が続き、低迷するドイツを「欧州の病人」と称した。
(中村容子)
(ドイツ)
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