欧州産業界、フォン・デア・ライエン委員長の一般教書演説の競争力重視の姿勢評価も、具体策の実施要請

(EU)

ブリュッセル発

2023年09月20日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は913日、同日行われた欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の一般教書演説(2023年9月14日記事参照)について、EU経済が抱える課題を再確認したと評価しつつ、具体策の迅速な実施を求めるコメントを出した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規制負担の軽減や、新たな貿易協定の実現、産業競争力診断の迅速な実施のほか、企業持続可能性報告指令(CSRD2023年9月5日付地域・分析レポート参照)などで求められる企業の報告義務を25%削減することを要請した。フォン・デア・ライエン委員長がEUの中核的経済戦略と位置付ける欧州グリーン・ディールについては、「EUの産業競争力の低下要因を解決する産業横断的な政策とする必要がある」と述べた。

風力発電部門は新政策パッケージ提案を歓迎

欧州風力協会(ウインド・ヨーロッパ)は同日付声明で、風力発電に関する新たな政策パッケージの提案が表明されたのを歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同時に、フォン・デア・ライエン委員長が「欧州のサクセスストーリー」と表現したEU風力発電部門は、安価な中国製タービンの流入拡大によって苦境に立たされているとして、現況への危機感をあらわにした。

新たな政策パッケージは、許認可プロセスのさらなる迅速化や、EU加盟国によるオークション制度の改善実現、労働者のスキルアップ、企業の資金調達やサプライチェーンの安定を目指す内容。

許認可については、2022年末に再生可能エネルギーの整備加速を目的とする暫定緊急規則(2022年11月17日記事参照)が施行されるなど、迅速化に向けた取り組みもあるが、欧州域内で認可を待つ風力発電事業の発電容量は合計で約80ギガワット(GW)に上ると指摘。加盟国レベルで許認可の迅速化が進まなければ、EU全体で2030年に420GWという発電容量目標を達成できないとした。

オークション制度に関しては、制度設計の不備や、質や安全性を考慮しない価格競争となっている現状を指摘。具体的には、一部の加盟国で採用されている落札事業者が一定金額を政府に納付する必要がある仕組みの見直しや、入札参加資格審査や総合評価落札方式の実施を提言し、加盟国に迅速な対応を求めた。

また、風力発電部門は2030年までに20万人以上の雇用創出が見込まれるが、スキルを持つ人材は不足しており、欧州委に対し労働者の必要なスキル習得の強化策も要請した。

(滝澤祥子)

(EU)

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