デジタルルーブルの試験運用開始、VTBバンクが初の取引を実施

(ロシア)

調査部欧州課

2023年08月25日

ロシアで8月15日にデジタルルーブルの試験運用が開始され、業界2位のVTBバンクが送金や口座開設など初の取引に成功したと発表した。ロシア中央銀行は、デジタルルーブルの試験運用は国内の一部銀行とその顧客の間で行われるとし、成功すれば2025年から企業や個人に普及させたいとしている(同行発表8月9日)。

デジタルルーブルは、紙幣・貨幣などの現金、銀行預金などの非現金に加え、ロシア中銀が発行し管理をする3番目の通貨となる。民間銀行は、利用者のデジタルルーブル口座開設、送金、ATMから現金を引き出す仲介を行う。1デジタルルーブルは現金1ルーブルの価値があり、法定通貨として扱われる。中銀はデジタルルーブルのメリットについてa.国民や事業者などの利用者に新しい決済手段を提供する、b.金融事業者の競争を促し新しい決済インフラの開発を促進する、c.政府の予算管理費用削減および外国との決済を促進する、と説明している。

ロシア中銀のオリガ・スコロボガトワ第一副総裁によると、デジタルルーブル試験運用の第1段階では、国内の銀行13行とその顧客約600人、11都市の30店舗が参加し、デジタルルーブル口座の開設と利用者間での送金、店舗でのQRコード決済が行われる。2024年から、新たに16行の銀行が試験運用に参加する予定だ。スコロボガトワ氏は、全ての試験運用が正常に完了した場合のみ、2025年から国民および企業がデジタルルーブルを利用できるようになると述べている(ベドモスチ紙8月10日)。

スコルコボ経営大学院ブロックチェーン・フィンテック研究所長のエゴール・クリボシェヤ氏は、デジタルルーブルの発行により、シャドーエコノミー(統計には表れない非公式経済)の規模を抑えることができると説明した(ベドモスチ紙8月10日)。

ガイダル経済政策研究所のセルゲイ・ドロビシェフスキー研究部長とロシア国民経済公務アカデミーのエレーナ・シネリニコワ・ムリレワ氏が7月28日に発表した報告によると、「デジタルルーブルはマネタリーベースに含まれ現金と同様の扱いとなる。デジタルルーブルの利点は非稼働日がない。発行者であるロシア中銀には債務不履行のリスクがないため、通貨としての信頼性が確保されている。他方で、複数の利用者が共同で使用する口座の開設ができない。また、利用者がデジタルルーブルを使うには銀行の預金を引き出すことになり、商業銀行にとっては預金が流出するリスクがある」とコメントしている。

(小野塚信)

(ロシア)

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