財政赤字対策のため超過利潤税を導入

(ロシア)

調査部欧州課

2023年08月15日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月4日、超過利潤税の導入を決めた連邦法第414-FZ号に署名した。超過利潤税とは、国税基本法上の益金から損金を差し引いた2021~2022年の平均所得が2018~2019年のそれを上回った場合、超えた部分の10%を2024年1月28日までに徴収するもの。課税の対象となる所得は、通常の企業利潤税(法人税)算出の計算方法に基づく(注1)。超過利潤税の徴収は1度限りとされている。

納税義務者は、一部の例外(注2)を除く、ロシア企業およびロシアに所在し納税対象となる外国企業。超過利潤税の課税対象は、2021~2022年の所得の平均額が10億ルーブル(約15億円、1ルーブル=約1.5円)を超えた部分。

他方で、課税対象の減免規定もある。2022年の所得から控除を引いた額が同年の所得の2分の1を超える場合、2021~2022年の平均所得と2018~2019年の平均所得の比が、2021年末と2022年末の総資産の帳簿価格の平均額と、2018年末と2019年末の総資産の帳簿価格の平均額の比よりも低い場合、超過利潤税の課税対象は2022年の所得の半分となる。

超過利潤税法の発効は2024年1月1日で、納税期限は2024年1月28日。ただし、発効前でも超過利潤税の前払い分として2023年10月1日から2023年11月30日までに納税した場合には、納付すべき税額の半分を上限に、前納した分が控除される。

超過利潤税導入の背景には、2023年に入り顕著な歳入不足(2023年5月31日記事参照)がある(ティンコフ・ジャーナル2023年7月21日)。ロシア政府は、同税の徴収により3,000億ルーブルの歳入増を見込む(「RBK」2023年8月4日)。

超過利潤税導入について、ビジネス界の受け止め方は複雑だ。ロシア産業家起業家連盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長は、一度限りの追加徴収よりも(対ロ制裁下の)新たな状況に即した抜本的な税制を構築すべきだった、と評する(インターファクス通信2023年7月17日)。ボリス・チトフ起業家権利保護大統領全権代表は8月4日、自身のテレグラム・チャンネルに、ビジネスには明確なルールが必要で、後付けの、場当たり的な対応は事業展開の障害となる、とのコメントを投稿した。

(注1)ただし、一般的に規定される減税措置は一部適用されないものがある。

(注2)中小企業、2021年1月1日以降に設立された企業、2022年中にロシアの法令により貸与された箇所でのエネルギー資源採掘に従事した企業、2021~2022年の平均所得が2018~2019年のそれを下回った企業など。

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