英国排出量取引制度(UK-ETS)を改革、排出量上限を引き下げへ

(英国)

ロンドン発

2023年07月07日

英国政府は7月3日、英国排出量取引制度(UK-ETS)の改革を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。温室効果ガス(GHG)排出可能量の上限を引き下げるとともに、UK-ETSの対象となる産業セクターを拡大する。2022年3月から6月にかけて実施した当該制度の変更案に関する意見公募を反映したもの(意見公募に対する英国政府の回答全文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

2024年から、GHG排出可能量の上限を現行の13億6,500万英国排出枠(UKA、注1)から9億3,600万UKAへ引き下げる。ただし、2024〜2027年を移行期間とし、この間、未割り当て分の排出権5,350万UKAをオークションにかけるとしている。

また、全体の排出枠に占める無償排出枠の上限を37%から40%へ引き上げる。これにより、カーボンリーケージのリスク(注2)が高い産業セクターに引き続き排出枠を無償で提供できるようにする。また、将来の無償割り当て配分の手法は2023年末までに協議するとしている。

2026年から国内海運、2028年からは廃棄物燃焼、廃棄物発電もUK-ETSの対象となる。国内海運については5,000トン以上の大型船舶が対象。併せて、2026年以降、航空セクターの無償割当枠を段階的に廃止することも発表した。

そのほか、UK-ETSで、GHG除去(GGR)技術による削減量を取引する方針も提示した。詳細設計は今後進めるものの、大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収する技術(DAC)などへの早期投資を促進し、GGR技術開発の加速を支援するとしている。

UK-ETSは、英国のEU離脱(ブレグジット)の移行期間終了に伴い、欧州排出量取引制度(EU-ETS)からも離脱し、2021年1月から導入された(2021年5月25日記事2021年7月12日地域・分析レポート参照)。

2023年1月に発表されたネットゼロ政策に関するレビュー報告書「ミッションゼロ」(2023年1月19日記事参照)では、UK-ETS制度の高度化が政府に対して提言された。これを受けて政府は、2023年3月に発表した新たなエネルギー戦略「パワーリングアップブリテン」で、ネットゼロ政策の推進に適したUK-ETS制度の今後の方針を2023年度中に策定することとしていた(2023年4月5日記事参照)。

(注1)1排出枠当たりの温室効果ガス(GHG)排出量は1トン〔二酸化炭素(CO2)換算〕。

(注2)気候政策に関するコストを理由に、企業が排出規制のより緩い他国に生産を移転するリスク。

(菅野真)

(英国)

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