欧州環境庁、大気汚染物質の排出削減の進捗を報告、アンモニアが課題

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月11日

欧州環境庁(EEA)は628日、EU20202029年に排出削減が求められている5つの大気汚染物質(注1)の加盟国ごとの2021年実績と、2030年以降のより野心的な削減目標に向けた進捗報告を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU加盟国の多くは2005年以降、大気汚染物質の削減傾向を維持している。最大の課題は主に農業部門から排出されるアンモニアの削減だとした。

EUは河川や地下水、大気中の汚染物質の規制強化に向けた「汚染ゼロ」政策パッケージを発表し(2022年11月2日記事参照)、2050年までに有害な汚染物質のない環境を目指している。

加盟国が2023年に提出した2021年のデータによると(注2)、加盟国のうち13カ国は20202029年の国別排出削減目標を達成。一方、残り13カ国は5つの汚染物質のうち少なくとも1つが未達成だった。2030年以降の削減目標については、ベルギーとフィンランドを除く全ての加盟国で1つ以上の汚染物質の排出を削減する必要があり、アンモニア、窒素酸化物、微小粒子状物質が最大の課題となっている。二酸化硫黄は多くの加盟国が既に2030年以降の削減目標も達成していた。

農業部門が総排出量の93%を占めるアンモニアの排出削減は最大の課題だ。加盟国のうち10カ国は20202029年の削減目標を達成するために、さらに最大10%削減する必要がある。2005年以降、多くの加盟国でアンモニア排出量は微減しかせず、増加している国もある。欧州委が202212月に発表した報告書(第3回クリーン・エア見通し)によると、現在実施されている対策だけでは不十分で、持続可能な肥料の使用など、さらなる対策が必要だとした。

微小粒子状物質の主な排出源は住居や商業施設のエネルギー消費だとした。居住用建物の暖房設備に使用している固形バイオマスや化石燃料の燃焼が排出量に大きく寄与している。削減に向け、断熱材と暖房システムの改良や、低排出ボイラーの設置、燃料の切り替えなどが必要となる。また、製造業や採掘産業、内燃機関や自動車のタイヤとブレーキの摩耗などを含む道路輸送からの排出も大きい。

窒素酸化物の主な排出源は道路輸送部門で41%、エネルギー供給部門が17%を占める。製造・採掘産業部門、住居・商業施設部門はそれぞれ13%だ。リトアニアとルーマニアを除く全ての加盟国が2021年の排出削減目標を達成した背景には、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンで道路輸送からの排出量が減少したことが要因と考えられる。

(注1)窒素酸化物(NOx)、非メタン揮発性有機化合物(NMVOC)、アンモニア(NH3)、二酸化硫黄(SO2)、微小粒子状物質(PM2.5

(注2)クロアチアは未提出。

(大中登紀子)

(EU)

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