WIIW夏季経済予測、中・東欧は微成長を保つも、下方リスク高まる

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、オーストリア)

ウィーン発

2023年07月10日

ウィーン比較経済研究所(WIIW)は7月5日、中・東欧と西バルカン諸国の夏季経済予測を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。対象各国はこれまで、ロシアのウクライナ侵攻による経済的打撃に対し驚くべき回復力を発揮したが、高インフレ、金利の上昇、世界経済の低迷によって成長が抑制されると予測した。2022年第4四半期にはすでに低成長だったが、2023年第1四半期にポーランド、チェコ、ハンガリーの実質GDP成長率がマイナスに転じた。首席担当者のバレリー・アストロフ研究員は「春季経済予測(2023年5月10日記事参照)と比べて、「夏季経済予測で下方リスクが著しく高まった。ウクライナ情勢が悪化する可能性があるほか、欧州中央銀行(ECB)による金利の引き上げ、ドイツの不況が原因だ。ドイツの産業競争力は米国よりはるかに高いエネルギーコストのため大きく低下している。それはもちろん、ドイツ経済と緊密につながっているビシェグラード4カ国(注)をはじめとする中・東欧経済にも悪影響を与える」と述べた。

2023年の中・東欧のEU加盟11カ国のGDP成長率(予測)の平均は1.2%で、EUの0.7%、ユーロ圏の0.5%を上回る。南・東欧の加盟国であるルーマニア(3.0%)とクロアチア(2.5%)は堅調に伸びる一方、ビシェグラード4カ国の平均は0.6%に過ぎない。西バルカン6カ国は平均1.9%とされている。ハンガリー(マイナス0.5%)を除く、ほとんどの国は通年の不況を避けられるとしているが、成長率は前年より大幅に低下する見通しだ(添付資料表参照)。

一方、ロシアとウクライナでは、経済がある程度回復すると予測した。西側の経済制裁が続いているにもかかわらず、ロシアの2023年のGDP成長率は軍需産業と個人消費の拡大を追い風に1.0%となり、ウクライナは2022年のマイナス29.1%から2023年には2.0%のプラスに転じる見通しだ。

消費者物価指数上昇率はほとんどの国で頭打ちとなったが、2023年の中・東欧のEU加盟11カ国の平均は11.5%で、ユーロ圏の平均(5.7%)の2倍近い。主な原因は食料品の価格急騰と企業の利益率の上昇だ。「典型的な賃金・物価スパイラルではないので、金利の引き上げで抑えることは難しい」とアストロフ研究員は指摘する。

オーストリア経済の脱ロシア化のペースの遅さも指摘されている。2022年のロシアからのガス輸入(数量ベース)は前年比38%減となったが、ガス輸入全体に占めるロシア産ガスの割合は、2023年2月に依然として78%を占めている。オーストリア企業のビジネスチャンスとして、ロシアは長期的な魅力を失ったことから、WIIWは南・東欧を目指すことを推奨している。前述のルーマニア、クロアチアのほか、アルバニア(2023年の成長率予測3.3%)、コソボ(3.4%)、モンテネグロ(3.5%)の経済も順調に伸びている。アストロフ研究員は「従来、同地域での主要な投資国であるオーストリアにとって、ビジネスチャンスは確かにある」と述べた。

(注)ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキアの中・東欧4カ国。

(エッカート・デアシュミット)

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、オーストリア)

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