在ロシア進出日系企業、事業停止が増加も撤退は一段落

(ロシア、日本)

調査部欧州課

2023年07月03日

ジェトロがロシア進出日系企業を対象に5~6月に実施したアンケート調査結果によると、日系企業のロシアビジネスの縮小傾向が続いている。撤退の動きは一段落したものの、一部もしくは全面的に事業を停止する企業(いわゆる「休眠」を含む)の割合が増加した。日本人駐在員数や現地従業員数の減少もあらためて浮き彫りとなった。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化して先行きが見通せない中、規模を縮小しながら現状できる範囲での対応を模索する企業が目立つ。

ロシア進出日系企業のうち、一部もしくは全部の事業停止(いわゆる休眠を含む)を行う割合は、前回調査(2023年1月、2023年2月22日記事参照)から5.6ポイント増加し、66.2%だった。「通常どおり」(30.9%)は4.5ポイント減少した。「撤退済み・撤退の手続き中」とした企業は回答企業中1社のみだった(添付資料図1参照)。

一部もしくは全面的に事業(操業)を停止するに至った要因としては、レピュテーションリスク回避や、本社や在欧統括会社の方針変更が上位に挙がったほか、日本や西側諸国による対ロ制裁といった要因も半数を超えた(添付資料図2参照)。

「撤退済み・撤退の手続き中」と回答した企業は1社。撤退方法は「現地他社、投資家への譲渡、売却」だった。撤退要因としては、日本や西側諸国による対ロ制裁のほか、レピュテーションリスクが顕在化したことや、ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大、全事業におけるロシア市場の割合の小ささが挙がった。

「通常どおり」と回答した企業は、事業運営上の困難として物流の混乱・停滞や、日本や西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」を挙げた(添付資料図3参照)。

今後半年から1年後の事業展開見通しでは、17.6%の企業が「休眠」すると回答(選択肢は今回から追加)。前回調査に比べ、「撤退」(2.9%)が7.2ポイント減少した。「不明・該当せず」(8.8%)が5.3ポイント減、「縮小」(32.4%)が5.0ポイント減、「拡大」(回答なし)が1.0ポイント減少した一方、「維持」(38.2%)が0.8ポイント増加した(添付資料図4参照)。

駐在員がロシア国内で勤務している企業のうち、2022年初時点と比べて駐在員数が「減少」とした企業は半数を超え、57.2%となった(添付資料図5参照)。「増加」を選択した企業はなかった。ロシア拠点の現地従業員数についても、「減少」とした企業は66.2%と半数を超えた(添付資料図5参照)。

アンケート調査は5月31~6月7日の期間で、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業と一部の在サンクトペテルブルク日系企業157社を対象に実施。68社から有効回答を得た(有効回答率43.3%)。なお、同アンケートで調査した在ロ日系企業の景況感については2023年7月3日記事参照。

(後藤大輝)

(ロシア、日本)

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