欧州委のELV規則案、自動車業界は懸念示すも、リサイクル部門は歓迎

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月26日

欧州自動車工業会(ACEA)は7月13日、欧州委員会が同日発表した自動車設計・廃車(End-of-Life Vehicles:ELV)管理での持続可能性要件に関する規則案(2023年7月20日記事参照)について、持続可能な車両設計に関連する既存の法令や優良事例と重複したり、煩雑化したりする恐れがあると懸念を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委が提案した再生材の利用割合の目標について、再生材の需給バランスが不均衡なことや、既存の技術の限界が考慮されていないと主張。今後のEU機関の審議では、自動車に適用する廃棄物、製品や化学品関連の法令との一貫性を重視すべきだとした。

同規則案は、現行のELV指令と型式認証の再使用、再利用、再生の可能性に関する指令(3R指令)を1つにまとめるものだが、ACEAはこれにも反対の立場を示した。ACEAによると、型式認証を受けてEU市場に投入された部品のリサイクルに関する技術の中には、開発途上にあるものもある。循環性向上に向けた投資を確保するには、研究開発の期間や新技術の実用化までの十分なリードタイムが必要と指摘した。

対照的に、欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は同日、EUレベルでのルールの調和化に向け、2指令をまとめて規則化することや、車両のライフサイクル全体での循環性の向上に重点を置き、再生プラスチックの活用を促す点を歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案では、新車に必要なプラスチックの25%以上を再生プラスチック(うち廃車由来25%)にするとした(第6条1項)。EuRICは、規則案が発効すれば、同条項が適用開始になるまでの6年間で再生プラスチックの価格が需要増に伴って上昇し、プラスチックのリサイクル技術への投資が拡大すると期待を示した。再生材の利用割合の目標を新車生産に必要な鉄など金属類やタイヤについても設定するよう提言した。

再利用のために部品取り出し義務が課されることについては、車両の破砕後に品質を落とさずに特定の原材料を自動で回収する技術などの手頃な価格での利用に向け、欧州企業が先駆的に開発を進めるのに必要な投資に支援を求めた。拡大生産者責任制度については、特にメーカーに財政的責任を求め、リサイクル部門の利益も確保される仕組みが望ましいとした。

プラスチック産業団体プラスチックス・ヨーロッパも同日、規則案は再生材の使用を義務付ける重要性を認識し、自動車業界に重要と同時に、審議中の包装・包装廃棄物規則案(2022年12月2日記事参照、注)など他部門の先例にもなると評価した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。特に自動車用のプラスチックの多くは高品質なポリマーで構成され、リサイクルが難しい。目標の実現には、革新的な技術の活用が必要として、ケミカルリサイクルへの投資促進に向けた政策枠組みの策定を欧州委に求めた。

(注)ジェトロの調査レポート「EUの循環型経済政策(第2回)包装・包装廃棄物規則案を中心とする2022年政策パッケージ第2弾」(2023年3月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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