インド・スリランカ首脳会談、物流や再エネ分野などで連携促進へ

(インド、スリランカ)

コロンボ発

2023年07月25日

インドのナレンドラ・モディ首相とスリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領は7月21日、ニューデリーで首脳会談を実施した。ウィクラマシンハ大統領は2022年7月に就任後、初のインド訪問。2023年は両国の外交関係樹立75周年に当たる。

両国の発表によると、ウィクラマシンハ大統領は、インドの経済発展が近隣諸国やインド洋地域にとって有益と強調した上で、スリランカが2022年に直面した経済危機とそれに伴う改革について説明するとともに、インドからの支援に謝意を伝えた。モディ首相は、危機克服を目指すスリランカ国民への敬意を示すとともに、安全保障上の利益と発展に向けた協力を強調した。加えて、両首脳は各種分野の経済連携や両国間の漁業問題、スリランカ国内の民族和解や地方分権などについて議論を交わした。

両首脳は会談後、両国の連結性向上を目的とした「インド・スリランカ経済連携ビジョン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。物流や再生可能エネルギー、貿易投資やデジタル分野などの協力が挙げられた。タミル人が多く居住する南インドのタミル・ナドゥ州や、スリランカ北部州、東部州での開発を強調している。同ビジョンの要点は次のとおり。

  • 地域の物流と海運の結合に向け、スリランカのコロンボ、トリンコマレー、カンケサントゥライの港湾や物流インフラの開発で協力。
  • インドのナガパッティナムとスリランカのカンケサントゥライ間の旅客船フェリー航路、インドのラーメーシュワラムとスリランカのタライマンナール間のフェリー航路の再開。
  • インドのチェンナイとスリランカのジャフナ、コロンボ、トリンコマレー、バッティカロアなどとの航空便の接続強化。ジャフナ空港への投資促進。
  • 洋上風力発電や太陽光発電を含むスリランカの再生可能エネルギー分野の開発協力。スリランカの電力コスト削減や外貨獲得にも資するべく、インドとスリランカ間に大容量の送電網相互接続を確立し、スリランカからインド経由で南アジア地域諸国との電力取引を可能とする。また、トリンコマレーのサンプールの太陽光発電と液化天然ガス(LNG)、インフラの早期開発を実施。先進技術によるグリーン水素、グリーンアンモニアに関する協力を模索。
  • 石油貯蔵施設の開発で現在協力しているトリンコマレー地域の工業ハブとしての発展。スリランカへのエネルギー供給を目的に、インド南部からスリランカへの石油パイプライン建設、スリランカの沖合の石油、天然ガスの素となる炭化水素の共同調査。
  • スリランカの国有企業売却や、さまざまな分野の製造・経済地区でインドからの投資を念頭に置いた投資交流。貿易投資の包括的強化を目的とした経済・技術協力協定の協議への着手。貿易決済通貨としてインド・ルピーを認めるとともに、統合決済インターフェース(UPI、注)のデジタル決済の運用合意。インドのデジタル公共インフラを活用し、スリランカ国民へのより利便性の高いサービス提供。
  • 観光業強化の観点から、インドにある仏教寺院の巡行や、スリランカにあるヒンドゥー教や仏教、その他の宗教史跡の紹介。スリランカへの高等教育機関や技能訓練施設の設立。相互の関心分野で研究・学術機関間の協力拡大。
  • トリンコマリー港とコロンボ港への陸路アクセス開発を目的としたスリランカとインド間の陸路接続の確立。陸路接続に関する実現可能性調査の早期実施。

(注)UPIはインド政府が主導する電子決済プラットフォームで、スマートフォンや携帯電話からQRコードや仮想支払いアドレス(VPA)を使用して簡単に支払いを行うことができる。

(大井裕貴)

(インド、スリランカ)

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