米老舗ビールメーカーのアンカー・ブルーイング、127年の歴史に幕
(米国、日本)
サンフランシスコ発
2023年07月25日
米国の複数のメディアは7月12日、米国で127年続く老舗ビールメーカーのアンカー・ブルーイング(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)が事業を停止すると報じた。従業員には解雇60日前に通告され、退職金が約束されたという。
アンカーは1896年に全米初のクラフトビール醸造所として設立された。サンフランシスコ大地震や火災、禁酒法、一時的な閉業などを乗り越え、地域の小さな醸造所から全米へと規模を拡大した。2017年8月にはサッポロホールディングス(本社:東京都渋谷区)がアンカーを約8,500万ドルで買収した(注)。インディア・ペール・エール(IPA)などのビールをスーパーやレストラン、バー、タップルームなどで販売していた。
アンカーの広報担当サム・シンガー氏は、同社製品の70%はレストランやバーで販売されてきたとし、「アンカーの心臓を貫く杭はパンデミックだった」と、新型コロナウイルス禍による店舗の休業が事業停止の要因だったことを明らかにした。また、食料品店で販売するために2021年には製品のブランド名を変更し、ビンや缶のビール製造を増やしたものの、これらの変更が「売り上げの大幅な損失を補うことはできなかった」とし、販売先のカリフォルニア州への限定や、製品の1つクリスマス・エールの製造中止なども進めるものの、事業停止を防ぐには至らなかったとされている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版7月12日)。
アンカーは、醸造は中止したものの、商品の在庫がある間は梱包(こんぽう)と販売を継続するという。他方、現在はアンカーのビールが入手困難になっており、地元住民からアンカーのビールを飲みたいという声も聞かれる。
(注)サッポロホールディングスは7月12日付のプレスリリースで、アンカーの解散に伴って約60億円の損失を見込んでいることを発表している。
(濱真奈)
(米国、日本)
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